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「私はこれから、片方の霊力の安定を計る。
その時にどちらなのかと考えている時間が惜しい…。
だから、もうどちらかの生活に安定してほしい」
「神様なのに…」
「神様なのに…」
「その神様がこんなに頼んでいるんだ、聞いたらどうだ!?」
「私は良いよ」
「奈穂!?」
「今のまま、牢屋で暮らしていきたい…」
「でも…今まで交換したりして、楽しかったでしょ?
もうしたくないの?」
「香奈…分かってるでしょ?
いつまでも続く訳じゃない、いつかは出来なくなるのよ」
「そんな…」
「いくら双子っていっても、既にいくつか違ってきてる。
このままでいけば、絶対に誰かに気付かれる…。
ね、もう終わりにしよう…?」
「そんなぁ…」
「香奈、また遊びに来てね?」
「奈穂…」
ぐすっと香奈が泣きじゃくり、奈穂の元に寄り添う。
「それで良い。
じゃあ、私はこれから調教を始めるが、それを知っていてほしくはない。
この夢の記憶を消させてもらうぞ」
それから、私達は気を失って、気が付くと現実に戻っていた。
奈穂が香奈の居る筈の牢屋の中に、香奈が奈穂の立場だった外側に。
奈穂は香奈、
香奈は奈穂として、
生き始めたのだ…。
「あなた、だぁれ…?
何で私と同じ顔をしているの…?」
外側の子が聞いた。
「あなた…奈穂ね?
私は香奈って言うの。
知らないよね、私達は双子なのよ?」
「そうなの!?
わぁ、嬉しい!
お兄様しかいないから、姉妹が欲しかったの!」
ガチャッという音と共に、蔵の扉が開き、歩いて来たのは隼人だった。
「何で、奈穂が…」
「お兄様も知ってたのね!?
狡いわ、私だけ知らなかったの?
双子だって…本当に嬉しい!」
凍てつく隼人の表情。
それも知らずに楽しげに話す双子。
神は、夢だけでなく、それまでのお互いの記憶までも"消し去ってしまった"。
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