8 「この家に伝わる伝説を聞いた事はあるか?」 「ある?」 「無いよね」 「双子が生まれると災いが起きると代々伝わっておる。 生まれれば、必ず赤子の時に殺せと。 だが、それは間違いなのだ」 「そうなの」 「それを私達が言い伝えていく事を、私達に頼みたかったの?」 「なるほどぉ。 そっかぁ」 「違う」 「違うって」 「間違えちゃった」 「双子の片割れに大いなる力が宿り、全てを滅ぼすと言われていたのだ」 「………」「………」 自分達も双子なので、思わず黙ってしまう。 「だが本当はどうなのか。 それを知らせに来たのだ。 言い伝えを変えさせる訳じゃない…」 ここで一息つく神様。 姿を見せようとしない。 「大いなる力とは、私の事だ。 そして、双子ばかりを狙う訳じゃない。 …偶然双子が多かっただけで。 同い年の子供がいる時に現れたのだよ…。 私は現れて、霊力の倍増を試みたんだ。 神の意志を伝える重要な役目であるお前等の家系の」 2人の子供は固唾を飲んで聞いていた。 「やがて、私の調教のしがいもあって、霊力の強い者も生まれた。 だが、その一方で強い霊力に呑まれて自我を無くす者も居た…。 その者は抑制が効かなくなり、全てを壊し続けた…。 最後には私の手で殺したが」 奈穂と香奈の背中を悪寒が走る。 「それの対策として、私は同い年の子がいる時を選ぶようになった。 そうすれば、競争力や対抗心で自分を保てるだろうと。 歳や性別、性格、家系…それらの違いのせいだと逃げないように」 「それからは?」 「自我を失う人は減ったの?」 「あぁ、ここ数百年でほとんど居なくなった。 だが…、他の力に目覚める者が増え出した…」 「それは何?」 「今は黙っておく。 知らなくても良いからな」 「じゃあ、調教って何するの?」 「鞭打ったり特別に練習したり?」 「本人に気付かれないように霊力のバランスを整えたりするだけだ」 「隼人お兄様にも調教したの?」 「すごく強いものね」 「いや、していない。 あいつは生れつきだ」 「やっぱり凄いねぇ」 「凄いねぇ」 「それで、だ」 . [*前へ][次へ#] |