6
2人が替え玉生活を送り始めてから一ヶ月が経とうとする時。
久し振りに、お互いの生活状況を聞き合った。
「ねぇ、香奈…。
今でも、そっちの生活に満足してる?」
「…急にどうしたの?
もしかして奈穂、飽きてきた?」
「そうじゃない!
そうじゃ…ないの…」
そう思われるのが怖くて、ずっと聞けなかったの…。
この心境は、香奈も同じだった。
「私、気付いたんだけど…」
「何?香奈」
「それぞれの生活って、何かが多過ぎて、何かが少な過ぎる…」
「極端なのよね、バランスが」
「うん…奈穂が言いたいのも、これなんでしょ?」
「うん、実は…。
これからは、何日か交換して生活しない?」
「賛成!」
その時もまた、眩しいくらいの笑顔をお互いに向け合っていた。
気分によりどちらで過ごすのかを決め、各々が充実した日々を送り始めた。
そんな中、6歳になった奈穂が学校に行き始めた。
もちろん香奈と時々交換しながらであった。
しかし、片方が学校に行くと、牢屋の中で1人は寂しく暮らすようになるのだ。
学校の無い日はお兄ちゃんも休みだから、会えないし…。
交換もままならないので、大体香奈が学校へ行く時が多かった。
そんな、もう2人が7歳になる時。
一つの問題に直面した。
『性格が、微妙に違ってきている…!』
どちらかといえば、香奈は物静かで思慮深く、奈穂は賑やかな事が好きであった。
「…香奈は、どうしたい?」
「…奈穂は?」
「私は…一生そのままでも良いから、牢屋の中が良い…」
香奈の顔がパァッと明るくなる。
「私は外が良い!
親よりも友達が欲しい!」
「本当!?」
「本当!!」
「やった、嬉しい!」
「私も!
じゃあ、来られる時は来て、学校での話をしてあげる!」
「楽しみにしてるからね!
忘れないでよ?」
「大丈夫、絶対忘れない!
指切りする?」
2人の小指を繋げ、間延びしたフレーズを口ずさみ、最後に小指を離す。
えへへーと笑う2人…。
これから起きることも知らずに、2人は微笑み合う。
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