12
「お前があいつと一緒にいても、俺の目には奈穂、お前しか映ってなかったぜ」
「…へぇ」
「あいつとは、ただの幼なじみ。
勝手に勘違いしたのは、お前。
浮気っぽかったのも、お前」
ユウが目線を私とは違う方向にずらしたので、その先をたどってみると、ラビがいた。
「別に、浮気だなんて…!」
「それっくらいの事で俺はお前を離したりしないし、あいつに譲る程諦めは良くないさ」
「……あっそ」
「で?」
「…何?」
「俺の疑いは晴れたみたいだし、俺はお前の事を許すと言ってる。
これでもまだ、戻ってくる気にならないか?」
それを聞いて、カアァッとなってしまう。
私、成り行きからユウの事を許しちゃってたんだ。
「…っ、知らないっ!」
どうしよう、私の心が明らかに動揺してる。
ユウから顔を背けて、お兄ちゃんのいる方向に飛んでいく。
しかし、手を掴まれてしまい、前に進めない。
「離してよ!」
ユウの手から自分の手を乱暴に引き抜いた弾みで、ユウとまた顔を合わせてしまう。
その時のユウの顔は…とても悲しそうだった。
「すまなかったな…疑われるような事ばかりして、奈穂の気を揉ませて」
そんな、私だって…ラビとの間で揺れてたし。
ユウの珍しい悲痛な声を聞いていると何故だか、心を締め付けられているような…。
ぎゅっ、と胸の前で両手を握りしめた。
いたたまれなくてユウから遠ざかろうとすると、ユウが一歩前に出て。
「頼むから、オレの側から離れるなよ!」
「私は…ノア…。
ノアのメモリーで、エクソシストがとても嫌いで…」
「んなの関係あるか!」
少し緊張した面持ちのユウが、片手を私の方に出してこう言葉を続けた。
「戻ってこい。
それとも、ホントに俺の事が嫌いになったか?」
その得意そうな顔も、照れ屋な性格も…。
私…本当は…。
「…き…大好き…っ!!」
ふぇっと泣き出しながら、その手を取り、ユウの首に抱き着いた。
「…当然だろ?」
口を片方に吊り上げ、笑みを浮かべているユウ。
惨めに泣いている私を、ユウが強く強く抱きしめてくれた…。
「私…。
ノアとかエクソシストとか関係なく、ユウの事が大好き…!」
「あぁ、俺もだ。
…奈穂、お前を愛してる」
fin...
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