5 「隼人お兄ちゃん…」 「何だい、奈穂? 話したくなった?」 「この露って…」 「(露!? 露について何を聞かれるの!?) …何だい?」 「ん…」 「(何だろう、何だろう…)」 「…やっぱりいいや!」 「(って、えーっ!?) 出かかったんなら、最後まで言ったらどう?」 「うん、やっぱり良いの!」 心が冷たくなっていくようだった。 心の中で…ユウへの愛を押し殺すのに、この場所は最適らしい。 木々の間から滴ってくる雫が私の顔を濡らし、愛が冷めようとしていた。 ―――でも、その時の私は思いもよらなかった。 凍った露が、どんなに脆く儚いのか…。 また、どんなに溶けやすいかを…。 まだ、心を殺せたと信じていた…。 「じゃあそろそろ戻らないと、千年公に怒られるよ?」 「あ、本当!」 もと来た扉をくぐり、ギリギリで朝食に間に合った。 食事中。 千年公が何かを思い出したかのように、ポンッと手を打った。 「そうでした、奈穂には、仕事をしてもらおうと思ってマスv」 「!? 何で、入ったばかりなのに!!」 隼人お兄ちゃんがバッと立って抗議する。 私は、別に構わないよ。 「…どんな仕事でしょうか?」 「ルル=ベルが卵を取り戻しに行くので、一緒についていってくださいv そして、アレン・ウォーカーを連れて来てくださいv」 「はい、分かりました」 「千年公、じゃあ僕も助っ人として同行してもいい?」 「別に構いませんよv では、3人で頑張って来て下さいネv」 …確かに早い。 ノアに覚醒して一週間も経ってないのに、もうこんな大仕事? 千年公は私を疑っているのかもしれない。 だから、試すためにも今回は私を…。 …絶対に完遂して、千年公の信頼を得てやる! ←BookTopへ戻る [*前へ] |