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小部屋。(短編)
反芻。(初。の後話)
日差しが眩しくなってきた初夏。
青々とした葉が心地良い風音を運んでくる。
こんな日の窓際は、どうしようもない睡魔が襲ってくる。
張った声で授業をする教師の声も睡眠薬。

生徒たちが落ちてくる目蓋と必死に戦う最中、また違ったものと戦っている1人の少年。
彼の涼やかな瞳は宙を見つめて、時折ピントが戻る。
そのたびにこっそりと辺りを見回し、またぽうっとする。





頭の中が和紗でいっぱいだ。

有理は、百面相のようになっている表情を隠しながら頭をフル活用する。

見慣れたはずの顔に浮かぶ知らない表情。
身体を繋ぐ一挙一動が鮮明に記憶されていて、瞬く間に蘇る。
逞しい腕の中に抱かれて、たっぷり吸った和紗の香り。
思い出す度に何度も嵌まれた唇や首筋、全身の恥ずかしい部分が疼いてしまう。

それにつられて、有理の痴態まで浮かんでくる。

泣いて喘いで…何度も甘ったるい声で名前を呼んで。
そんな自分が嫌じゃないことに戸惑って。
まるで他の事が頭に入らない。

辿られた唇を指でなぞると、背中にゾクゾクと快楽が沸き立つ。


「有理?」

いつの間に授業は終わっていたのか、驚いて振り向けば、そこには悩みの元凶である大好きな人。

「か…ずさ…」

小さな心音が自己主張を始める。

「かずさぁ…」

抱きつきたい衝動を抑えて、和紗の手を自分の両手で包む。
その手を何度も握りなおしながら言葉を探す。

「今日…いっしょに帰ろぉ…」

「いつもそうだろ?」

「うん。今日も、一緒に。それで、家来て…?」





◇ひとだんらく◇



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