小部屋。(短編) クラス替え。 終業式の帰り際、有理は和紗の部活終わりを待ってから、一緒に、昇降口に張り出されたクラス発表の紙を見に行った。 「あぁっ!やっぱり、同じだ!」 文理の希望によるクラス分けなので、共に理系の2人は同じクラスになって当たり前なのだが、やはり、事実として同じになると、喜んでしまう。 満面の笑みで和紗を見上げる有理だが、視線の先の愛おしい彼はただ、 「そうだな。」 とだけ呟いて、歩いて行ってしまう。 「嬉しくないの?」 小走りに付いて行きながら尋ねる。 「ん、嬉しいよ。」 有理は、素っ気無い答えに不満そうにしながらも隣に並んだ。 差し出したい手。しかし、人目を気にして握り締める。 風を受けていたその手は、やんわりと熱に包まれた。 「和紗!?」 「いいだろ?今日くらい。」 ふざけるように何度も指を絡め合いながら歩く。 一歩一歩進むたび、幸福感が溢れ出す。 「今日くらいって…何で?」 「何でもない。」 和紗はフイ、と顔を背ける。 握った手に、ほんの少し力を込めながら。 「教えて?」 「何でもないって。」 有理のよく通る声に甘えがかかる。 「和紗ぁ…」 「クラス…一緒だったから。」 「それだけ?」 やや切れ長な有理の瞳が丸くなる。 「そうだよ…悪いか…」 「ううん。嬉しい」 ◇ひとだんらく◇ ★前へ次へ☆ [戻る] |