小部屋。(短編)
蜜香。
白と黒のモノクロを基調にしてまとめられた和紗の部屋。
その中で目立つ鮮やかな淡蒼は、有理がプレゼントしたアロマグッズ。
可愛らしい形状にも関わらず、加湿器まで備えている小型の香炉である。
常時そこに入れられているのは、ラベンダーと桜のブレンドオイル。
少女ちっくな香りなのは、選んだのが有理だからであって、決して和紗の趣味ではない。
とは言っても、和紗はこの匂いを気に入って、毎日の疲れのリフレッシュに活用している。
何より、有理も同じものを使っているのが嬉しくて仕方ない。
そのせいで、時折有理を思い出して頬が緩むこともしばしばあるのだが、未だ家族には見られないで済んでいる。
そんなある日の話
週末、いつものように、有理の部屋で過剰なスキンシップを交えながら話す二人。
「有理も同じアロマオイル使ってるんだろ?なのにさ、微妙に匂い違くない?」
そう言って、わざと敏感な首元に鼻を近づけた。
「すごく甘怠くなってて、美味しそう。」
ちゅ、と音をたてて口吻けて、長めの襟足に指を絡める。
「っ…ん……和紗だって…同じだよっ。」
「違うから。ほら。」
和紗は、真っ赤になって離れようとする有理を引き寄せた。
そして、厚い胸板に顔を埋める羽目になって、慌てる有理の髪を撫でる。
「な?有理のが良い匂いする。」
「おっ、俺は、和紗のが…いぃ。」
すっかり腕の中に納まった仔猫は、和紗に抱きつき返す。
「心臓、ドクドクしてるよ。」
可愛らしい声がクス、と笑う。
「有理もだから。」
心地よい低音が素っ気なく返す。
「一緒だね。」
「何が?」
「…いろいろっ」
◆ひとだんらく◆
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