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小部屋。(短編)
輪。
俺の首には、いつも、小さなリングの通ったネックレスが掛かっている。
澄んだ紫色をした小さなアメジストが嵌っている、薬指サイズの指輪が…

ずっとつけていても、風呂に入っても錆びない。
俺の想いのように、いつまでも変わらず輝き続ける。







和紗の誕生日のこと。

有理と和紗は、珍しく外でデートをしていた。
とは言え、傍から見れば何でもない、ただの少しだけ見目麗しい「友達」二人組み。
手を握ることもない。

あんまりイチャイチャできない…

と、有理は二人きりの時の外出はあまり好かないが、和紗の誕生日を一緒に祝えるからか、浮かれた気分で待ち合わせをしていた。

いつもより、ちょっと可愛い格好をしてみる。
程には浮かれていた。

行き先は普段の友達と変わらない。

近所の大きなショッピングモールへ行き、服を見て、ゲームをして、昼食を食べる。

それから、流行りの映画を見たり、再び買い物に繰り出したりする。

一つだけ、違うことは

相手が恋人だ

ということ。

本人達にしか分からないけれど、とても重要なこと。

その実感だけで、有理は幸せだった。

言葉にしないけれど、行動にも出来ないけれど、ふと合う視線で通じ合う。
零れる笑みの甘さが醸し出す。
至福の時間。

互いの満ち足りた想いが、相手を心地良くさせ、尽きることのない幸福へと膨らんでゆく。




日が暮れる。
楽しかった1日も終わろうとしていた。

和紗は、律儀にも有理を家まで送っていく。

ああ…寂しい。

またすぐに合えるのに、寂しい。
どこか心の奥で、これが今生の別れの様な気がしてくる。

そんなはずはないのに。

「じゃあ…」

また明日。

言いかけて、有理の言葉は止まった。

無言で差し出された、小さな箱。

「今日、和紗の誕生日だよ?」

「んなの知ってる。」

「なのに、俺にくれるの?」

「違う。俺が貰う。」

「……は?」

言葉の意味が飲み込めず、俯いている和紗の顔を見つめる。

「いーから、開けろ。」

おずおずと受け取り、布張りの箱を開く。

中から見つめ返してくるのは、丸い輪に嵌め込まれた、鮮やかな…紫。
夕日に反射して、キラキラと静かに光っている。

「これ……ど…ゆ……」

「…・…有理を、俺にちょうだい。」

言葉が、出ない。

代わりに溢れてくるのは涙だけ。
紡ごうとする音は、全て空しく宙に溶けていった。

辛うじて、首を縦に振る。
何度も、何度も、頷いた。
気がつけば、和紗の腕の中にいた。

「ずっと…一緒に居る。」

ぎゅう、と抱きしめると、和紗の鼓動が伝わってきた。
とっても、早い。

「絶対、な。」

「ぅん…」



俺は、一生和紗のもの。





◇ひとだんらく◇





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