小部屋。(短編)
キッチン。
有理の家族が旅行に出かけた日、和紗がちゃっかり泊まりに来た。
濃密な夜の翌朝、珍しく和紗よりも早く起きた有理は朝ごはんを作ってみることにした。
取り敢えずエプロンをつけて、母親の苦労によって綺麗に保たれているキッチンに立つ。
慣れない手つきで包丁を扱い、トマトを切っていく。
レタスはパリパリと裂いて、洗う。これくらいは家庭科で習った。
我ながら上出来なサラダが出来上がっていく。
次は、ありきたりだけどオムライス…
と思いながら材料を揃えていると、後ろからぎゅぅっと抱きつかれた。
「ゆぅ〜りぃ〜何してんの、ぅん?」
甘くて腰に響く声が耳元で発せられると、有理の体は勝手に、疼くように反応してしまう。
「朝飯作ってんの!出来ないだろぉっ。」
「新婚気分。」
「っはぁ?…んなこっ恥ずかしいこと言うな…」
和紗の手は、外そうとしても絶対に外れない。
ふぅっ…と耳に吐息をかけられて身体が竦み上がる。
「っひ、ゃ…め」
耳朶に舌を絡められると、全身の力が抜けていった。
「エプロン姿も萌える。ねぇ、今度裸エプロンして。」
和紗が唇で、有理のすっきりとしたうなじを辿りながら囁く。
「バっ…やだよっ!しない!」
「んー残念。」
「和紗…離して?」
突然の落ち着いた口調。
不審に思った和紗が覗き込めば、恋人の頬は心なしか赤い。
「どうして?」
「キス…したくなった」
「してるよ。」
和紗は、わざと首筋を吸い上げてアピールする。
「違っ…くち…に、して」
「りょーかい。」
にっこり微笑み、有理の頬を支えて上向かせると深いキスを与えた。
ちゅ…くちゅ
淫らな音の響くキッチン。
それはさながら新婚家庭のよう。
◇ひとだんらく◇
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