小部屋。(短編)
彼。
※今回のは、有理クンと和紗クンではなく、僕と彼の話です。あえて人名は入れません。フリーダムに想像(妄想)して下さい(^v^)
ネタは英語のテキストから…
青々と茂った葉から日差しが透ける学校の並木道を、僕は一人で歩いていた。
布張りの古くて分厚い本を何冊か抱えながら、隣のグラウンドを見やる。
部活動で賑わう、何ともない、普通の風景。
そんな風景が愛おしく思えるのは、僕のロマンティックな性格のせいなのかな。
そう、思いながら歩道の先に視線を戻すと、いつの間にやら一つの人影があった。
だんだん近づいてくる。
その正体に気づいて、僕の鼓動は急に早くなる。
…彼だ。
密かに憧れている、クラスメイト。
意気地なしの僕は、まだ話しかけたこともないけれど、クラスのムードメーカーの彼は、とっても明るくて、優しくて…気が付けば、僕の視線は彼を追うようになっていた。
…一目惚れってやつなのだ。
クラスメイトとはいえ、まだ入学して2ヶ月もたたない。
きっと、僕のことなんて記憶にないに違いない。
僕は、剥げかけのコンクリートで埋められた地面を向いて、歩き続けた。
「ねぇ、君、同じクラスだよね!」
快活な声が聞こえる。
幻聴だ、と、自分に言い聞かせるが、その声は繰り返す。
「聞こえてんの?!」
ふと顔を上げれば、駆け寄ってくる彼。
「ぇ…と…何っ…かな?」
「持ってやるよ。重いだろ?」
彼が指差すのは、僕の本たち。
「だっ…大丈夫だよっ」
「お前、弱そうだから無茶すんな。」
そう言って、僕の腕に一冊だけ残して、残りを強引に持っていってしまう。
「…あ…りがと…」
赤くなった顔を隠すように俯いて呟く。
「どういたしましてっ」
元気な声が、僕の隣で響く。
この時僕は、未来の更なる幸せを、思いもしなかった。
◇ひとだんらく◇
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