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嗚呼、空は憎い程に


クラリと視界が歪み、先程鉛の玉を食らった脇腹に手を当てる。ドクドクと流れでる血の多さとやけに大きく響く心臓の音に舌打ちを漏らした。


 「あれ、片倉の旦那」

そんな言葉と共に視界に飛込んできたその橙の鮮やかさが、目障りで仕方がなかった。
器用に手に持った手裏剣を弄びながら軽く声をかけてくる。まるで天気の話でもしているかのように。

 「随分と派手にやられたね…気分はどう?」

 「最悪だ。テメェが視界にいるんだからな」

 「酷いなあ。最期までそういうコト言う?」


何でもないことのように『最期』という言葉を使われて、改めて己の状況を再確認した。

じわり、とまた己の血液が服を鮮やかな緋色に染める。
遠くでは鍔競り合いの音。恐らく我が主と虎の若子が戦っているのだろう。


 「あ」

 「…なんだ」

 「ウチの旦那が勝ったみたい…ごめんね?」

ということは主は負け、恐らく死んだのだろう。目の前の忍は本当に申し訳なさそうに謝ってくる。


 「………」

 「ん?なに?」

 「くそったれ。地獄に落ちろ」

 「酷ッ……まあ、地獄とやらも片倉殿がいるなら悪くないね」

にやにやと笑い顔を近付けてくる忍を見て再確認した。やはり俺はこいつが大嫌いだ。体が言うことを聞けば刀を胸に突き立ててやるのに。

 「じゃあね、片倉殿。いい夢を」

皮肉げに歪められた唇から漏らされた言葉を理解する前に忍の姿は消えていた。


 「畜生が…」


忍の姿がなくなったことによって空が飛込んできた。雲一つない晴天。


ああ、空は憎い程に青く広大で俺を嘲っているかのようだ。

こんな日になら死んでもいいかもしれない。そんなことを思いながら、込みあげるままに笑った。





END

061021
小十郎命日のつもりで書き始めたブツ。おかしいな、思ったものと全く違うものに…(汗)

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