〜chocolatre〜
2
最初にオカシイと感じたのは、堂本といる時だった―――。
一階から二階の踊り場まで来たところで、下りてくる人影に気付いた。
―――堂本か…。
確か、三年だ。二年の江井を背負っている。
生徒の中でも、相田共に、教師たちの中でも、一際、目立つ厄介な生徒だ。
(おや…?)
―――この香り…。
前に嗅いだコトのある種類の香りだ。
思わず、すれ違い、数段降りた時、堂本を呼び止めた。
「堂本君?その子、どうしたの?」
見るからに“何か”ある状況で、教師から声を掛けられる事などないのだろう。まして、“見るからに被害者”を連れている場合など―――。
驚いた表情で立ち止まっている。
「二年の江井君だよね?」
「…貧血起こしたらしいんで、保健室に」
「そう、偉いね」
―――貧血、ね…。
背中の祐輔が、ずり落ちそうになったようだ。軽く、身体を揺すり、背負い直すと、
「じゃあ…」
「ああ、ゴメン、ゴメン。早く、連れていってあげて」
「それじゃ…」
堂本は振り返る事なく、階段を降りて行った。
二人を見送り、
「さよなら…」
そう、言って思わず口元に、微笑が浮かんだ…。
(どちらの香りかな―――?)
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