〜hot chocolate〜
4
「チッ!」
(―――ちーちゃん…)
堂本が背中に纏った怒気が増している。
次に、白浜に会ったら、何を仕出かすか、わからない。自分だって、再起不能になるまでに、叩きのめしてしまいたい。が、自分達のしてきた事を棚にあげているのが、わかっている分、堂本よりも“覚めて”いる。
そして、改めて知らされる。
堂本と自分、互いが祐輔をどう想っているかを―――。
とにかく、二度と祐輔に手を出させない事だ。その為にはどうすればよいか…。
(とりあえず、今日は―――)
「そうだ、今日は、ちーちゃんも泊まっていってよ」
「…そうだな、そうさせて貰う」
翌朝、一番に起きると、朝食とお弁当の支度を始めた。
お米を研いで、炊飯器にセットする。炊き上がる間におかずを作る。弁当用に、鶏の唐揚げを揚げる。だし巻き卵、タコさんウインナーを焼く。朝食分もだし巻き卵を焼く。朝食に、鮭の塩焼き、ほうれん草のおひたし、冷奴を作る。
ご飯が炊けた。
祐輔と自分用に二段重ねの弁当箱におかずを詰める。大食いの堂本にはお重のような弁当箱を用意する。鶏の唐揚げ、だし巻き卵、タコさんウインナー、それから、作り置きしてあるきんぴらごぼう、夕べ祐輔に振る舞おうと作ってあったポテトサラダを詰め、彩りのプチトマトを飾る。ご飯を詰め、これも作り置きしてあるおかかを敷き詰め、海苔を敷く。冷ます為、蓋はせず置いておく。
そして、わかめと油揚げと長ネギの味噌汁を作った。味噌汁が出来たところで、匂いに釣られたのか、夕べ貸したスエットから、制服に着替えた堂本が台所にやってきた。
「…よう」
「あ、ちーちゃん、おはよう。顔、洗ってきなよ。ボク、ゆっぴょん起こしてくるから」
「…おう」
寝室へ向かうと、まだ祐輔がぐっすりと眠っていた。夕べとは違って、一晩眠りこける事が出来たのか、顔色が戻っている。このまま寝かせて、今日は学校を休ませてやりたい。が、祐輔はそれを望まないだろう。
「ゆっぴょん、起きて」
祐輔の身体を揺する。と、直ぐに目を覚ました。
「…う…ん…?」
身体を起こすと、キョロキョロと辺りを見渡し、不思議そうな表情を浮かべた。
「ボクの家だよ。昨日は泊まったんだよ」
「…あ…」
祐輔の顔色が青ざめた後、赤くなった。
昨日の事を思い出したのだろう。
「…き…のうは、ありがとうございました」
祐輔のか細い声が聞こえた。が、聞こえなかったかのように、それを無視し、明るく起床を促す。
「さ、ゆっぴょん、朝ごはん出来たから、制服に着替えて、顔洗ってきて。ごはん食べたら、今日は一緒に学校行こ」
「…はい…」
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