〜hot chocolate〜
9
「先輩!もうイイですから、離して下さい!」
ようやく、堂本が白浜から手を離した。
「行くぞ」
今度は、オレの腕が引っ張られた。
「今度、コイツに触れてみろ、ぶっ殺す!」
堂本はそう言い残して、生徒指導室を跡にした。
堂本が腕を引いて、ズンズン歩いていく。
「あの、先輩?今度はどこに行くんですか?」
「……」
堂本は黙ったまま、歩いていく。
「あのっ、さっきはありがとうございました」
「……」
無言の背中に声を掛ける。もし、堂本に連れていかれなければ、ああして白浜に対する事も出来ず、昨日の事を話す事も、気持ちを伝える事も出来なかっただろう。堂本のしてくれたコトに胸が熱くなる。
「でも、どうして、こんなにしてくれるんですか?」
「―――っるせえな」
急に振り返った堂本に真っ赤になって怒鳴られた。
「す、すみませんっ」
また前を向いて歩き出す堂本の広い背中に話し掛ける。
「でも、本当に色々ありがとうございました」
「……」
突然、堂本がピタリと立ち止まった。キャアキャアと騒がしい祐輔の教室の前だった。
「今日は送っていく」
「いえ、一人で帰れます」
ギュウっと堂本の腕を掴む手に力が入った。
「ダメだ。お前は隙だらけなんだよ」
「いや、でも―――」
「今日は、送っていく。わかったな」
堂本の声が低く変わり、腕を掴む手に更に力が入る。
「は、はい」
そう答えるとパッと腕が離された。
「…放課後、迎えに来る」
と、言って堂本は去って行った―――。
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