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〜hot chocolate〜
13
「あとは、一人で帰れますっ!」

「…何、言ってる。ちゃんと家まで送る」

「え…。でも、これ以上迷惑は―――」

「っるせえな!迷惑じゃねぇよ!」

つい、声を荒げてしまった。

「えっ…。でも、あの…」
「…迷惑なんかじゃねぇよ。ちゃんと家まで送っていく」

「…はい」

すっかり怯えさせてしまった。

(チクショウ…!怯えてんじゃねぇよ!)

立ち止まったままの祐輔の先を行く。
パタパタと追い付いて来ると、また隣に並んで歩き始めた祐輔に思わずホッとしてしまった。

「……」

「……」

静かに二人、並んで歩く。

「あ、着きました」

祐輔のマンションが見えてきた。

「…玄関まで送っていく」

「いえっ、本当にもう大丈夫です!」

祐輔のマンションの入り口まで来た。

「本当、もう、大丈夫ですからっ。ありがとうございましたっ」

中へついていこうとする堂本の胸元に両手を突き、祐輔が必死に押し留めるが、ビクともしない。

グイッ

堂本が祐輔の腕を引き、抱き寄せた。

「…へ?」

胸の中で、祐輔がマヌケな声を上げた。

「…お前は、危なっかしいんだよ」

「そんな事ありません、大丈夫です!だから、離してくだ―――」

祐輔が腕の中で逃れようと藻掻く。

「お前は、自分のコトがわかってない」

そういうと祐輔の力がフッと抜けた。

「…ソレ、白浜にも言われました。どういう意味ですか?」

「そのままの意味だ」

ぎゅうっと、祐輔を抱き締める腕に力が籠る。

「その上、隙だらけだ」

首筋に唇を這わせる。

「…せん…ぱい」

夜風に、祐輔の香りが混じる。

「…はな…して、くだ、さい」

「スゥ―――」

一度、大きく深呼吸をして、祐輔の香りを吸い込み、身体を離した。

(これ以上は、我慢が出来なくなる―――)

―――もっと欲しくなる。

「…せん…ぱい?」

祐輔が堂本の一連の行動に困った表情で、堂本を見上げている。

チュッ

改めて、首筋にキスを落とす。

「…ホラ、隙だらけだろう?」

「え?あ、はい…」

「気を付けろよ」

「はい、ありがとうございます、気を付けます!」

忠告したばかりだというのに、祐輔が真っ直ぐに目を見て、無邪気に礼を言う。

(甘いヤツだ)

「……」

(昨日の今日だ―――)

送ったばかりなのに、自分の家に連れ去って抱き壊してしまいそうになるのを抑え、別れを告げる。

「…じゃあな」

「今日は、送ってくれてありがとうございました!」

歩き出した背中に、祐輔の声が掛かる。

どこまでも、甘い―――。

「…チッ」

静かな夕暮れの道に、堂本の舌打ちが響いた。

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あきゅろす。
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