〜hot chocolate〜 14 「はぁ…」 考えても解決しない、次々と沸き上がり止まらない悩みの連鎖を、無理矢理断ち切り、ペットボトルをしまうと、溜め息と共に、冷蔵庫の扉を閉めた。 ―――風呂入ろう…。 とりあえず、拭かれはしたが、肌が気持ち悪い。 「あ…れ?」 部屋にカバンを置き、シャワーを浴びに行こうとして、ネクタイがない事に気が付いた。 ―――相田の家だ。 (ヤバい…) 母にバレれば、間違いなく、叱られるだろう。 そして、小遣いから買わされる事になる。 もともと、ネクタイは二本持っていた。が、そのもう一本を入学してしばらくたった頃、失くしてしまっていた。帰り道に、結んだ状態のまま緩め、首から外し、その輪を指にかけ、クルクル回しながら歩くという、今、思うと馬鹿な事をして…。ある日、ネクタイは、回す指から抜け、飛んで行き、川に落ち、(運悪く、前日に雨が降って水嵩が増していた)流れて行ってしまったのだ。 理由が理由だけに、叱られ、勿論、もう、買ってもくれなかった。その上、「次、失くしたら、自分の小遣いから買うように」と言い渡されていた。 ―――それはイタイ。 かといって、これから“ネクタイナシ”では、担任やら教師達にやっぱり叱られる。 一日なら、まだ「忘れた」で誤魔化しも出来るだろうが、『無い』となると、“それなりの事”になった上、買わないで済むわけではないし。 迷った末、相田へメールした。 ネクタイを忘れてはいないか、もしそうであれば、明日学校へ持って来て貰う訳にはいかないか、と。 直ぐに、赤やピンクの絵文字に彩られた、返信がきた。 『ちょうどメールしようと思ってた!バッチリ預かってるから、明日、ウチに取りに来てね』 「えっ?」 メール相手に、声が出てしまった。 ―――い、行きたくない…。 もう一度、持って来てくれるよう頼む。 また、直ぐに返事がきた。 『ダ〜メ。明日、ウチで待ってるね』 ハートの絵文字が増えている―――。 家に行くだなんて、困る。 『ダメだよ。明日、ウチでね』 諦めきれず、頼み込む。 『ダメだよん。また、明日ね。オヤスミ』 さして変わらない内容と、付け足された、最後の、『オヤスミ』がこれ以上の、メールのヤリトリを、そして、祐輔の懇願の受付終了を告げていた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |