〜hot chocolate〜
16
―――あー、相田に連絡しなきゃ…。
昨夜は、『オヤスミ』と告げられてからも、何とか気を変えてくれないかと頑張ったが、応じてはくれなくて、やっぱり、家に行くしかないんだと、諦めるしかなくなった。
結局、ホームルームが終わったら連絡する事になったのだ。
教室を出ながら、今、終わった、とメールを送る。階段を降り、下駄箱へ着いた辺りで、返信があった。
『道、わかる?』
わかる、と返す。
『んじゃ、着いたらメールしてね』
もう、校内にはいないらしい。
―――本当に、家で待ってるんだ…。
二十分程して、相田の家に着いた。
門の前で、言われた通りメールを送る。しばらくして、相田が出てきた。
薄いピンクのボタンダウンのシャツに、コバルトブルーのスキニーパンツ。
こういう色の合わせ方は、自分では到底、着られないと感心してしまう。
しかし、一つ、頭のリボンが減点。前髪を纏めたヘアゴムには、赤いリボンの飾りがついている。似合ってるといえば似合ってはいるが、全体で見ると浮いている。もったいない。髪型が、アレじゃなければ、文句なくカッコいいんだろうに。いや、それでも充分なカッコ良さに、自分との違いに、ガックリしてしまう。
その相田は、どう見ても、祐輔よりも先に着く為に、学校から慌て帰り、着替え、待っていたようには見えない。かなり前から、部屋で寛ぎ、のんびり待っていたとしか思えない。休んだのか、早退したのか…。どちらにしても、サボったのだろう。
「こ…ん、にちは…」
「遅かったね。迎えに行こうかと思ってたんだよん」
出迎えた相田は、手に何も持っていなかった。
「…あの、ネクタイは…?」
「ああ、部屋にあるよ。入って、入って」
と、軽くステップでも踏みそうな足取りで、中へ戻っていく。ついて来いという事のようだ。
やはり、躊躇ってしまう。
が、振り返りもせずに、中へ戻っていった相田の様子からして、持って来てくれる、なんて事はなさそうだ。ここで立ち続けて、不審者扱いされても、困る。
慌て後を追う。すっかり、先に行ってしまった相田に追い付いた時には、既に、離れの前だった。
追い付いた、というより、一応、玄関の前で待っていてくれたらしい。祐輔がやって来たのを見ると、戸を開けた。
「上がって、上がって」
「あのっ!」
「大丈夫、何もしないよ」
また、祐輔を置いて中へ入っていってしまった。
ここでも、淡い期待を抱いて待ってみるが、戻って来ない。
一つ大きく溜め息をついて、
「お邪魔します…」
中へ入った。
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