〜hot chocolate〜
13
ダルい下半身を引き摺るように家に帰った。母親は買い物にでも出ているのか、家には誰もいなかった。
キッチンに直行し、冷蔵庫を開け、ミネラルウォーターを取り出す。グラスを使わず、ペットボトルに直に、口をつけた。
半分ほど飲んでから、一息ついた。
開けたままの冷蔵庫から、ひやりとした空気が漏れてくる。内部を照らす、庫内灯をぼんやりと眺める。
―――何なんだ。
堂本に続いて、相田まで…。
ひょいひょいついて行った自分の浅はかさを、またも何の抵抗も出来なかった弱さを、悔やんでも悔やみきれない。
「話がある」という言葉を、素直に信じてしまった。「痛いの好き?」と問われて、逆らう事も出来なかった。
『お前、「学習する」って事知ってるか?』
いつぞや言われた、堂本のセリフが聞こえる。
―――だって。
相田が、あんな事するなんて思わなかった。“相田が”、ではなくて、“あんな事”をすると思わなかったのだ。堂本に負けず劣らず、“女に不自由していない”の代表のような男が、自分にあんな事をするとは思わなかったのだ。
―――だとしても、殴られるなり、蹴られるなりして、きっと碌な目に遭わない、と、思い至るべきだった。
(何でなんだよ…)
イヤだという気持ちは、当然ある。が、どうして?という思いが、大きくなっている。
一度だけじゃなく、何度もなんて、あり得ない。
一人だけじゃなく、二人もなんて、あり得ない。
一度だけなら、堂本の『気の迷い』と言えなくはない。
堂本だけなら、『堂本がオカシイ』と思える。
でも、こうなると、自分に何か落ち度があったのかと、思ってしまう。
オレが、何かしたんだろうか?
こんな目に遭うような、何をしたっていうんだ?
いや、やっぱり、二人して、頭がオカシイんじゃないか?
そういえば、何で名前知ってるんだろう?
ぐるぐると、疑問ばかりが駆け巡る。
イヤだと思う事も、何で?と思う事も、厭わしかった。
何だか、もう、考えたくなかった。
考えたくはないのに、考えてしまう。
それに、キスまでされてしまった。
ファーストキスだったのに―――。
せめて、ファーストキスくらいは、“彼女”としたかった……。
いつか、はわからないけど、好きなコとしたかった。
もう、ファーストキスだ何だと言ってる場合じゃないのはわかってるけど。
いや、だからこそ、せめて…。
なのに……。
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