〜hot chocolate〜
5
「始めるか…」
「は、はい?」
堂本の、低く呟いた声に、ゆっくりと振り向いた。
「さっさと、出せ」
「何を、でしょうか?」
「宿題があるんだろう?」
「あ…」
「何だ?」
「英語を…」
急いで、カバンから教科書とノートを出す。
「あ、じ、辞書、取ってきます」
部屋へ逃げるように飛び込んだ。
―――何で今日なんだよ。
(カラオケなんて、今日じゃなくてもイイだろ!)
行ってしまった母親を恨む。
このまま部屋から出たくない。が、こんなドア、軽く蹴破られてしまうだろう。とてつもなく気が重いが、こうなったら、さっさと終わらせて帰っていただくしかない。
ズシリと鉛のような辞書を手に、リビングへ戻ろうと、ドアの方へ振り返った。
「うわあ!」
ドアに堂本が立っていた。
「ここがお前の部屋か」
「…は、はい」
見ると、右手に、二人分の菓子と紅茶の載ったトレイを、左手にはカバンを二つ持っている。
個室は避けたい。
「あの、是非、リビングで、教えていただけ―――」
「ぁあ?」
願いは言い終わる前に、却下された―――。
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