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〜hot chocolate〜
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「…くん…」

どこか、遠くから、声がする。

祐輔は、今まさに、アニメに出てくる、骨付きの、“あの肉”を食べようとしていた。
なのに、そこを呼び止められた。すると、“あの肉”はパッと目の前から消えてしまった。
それで、気付いた。

―――ああ、オレ、寝てるんだ。

「…い…くん」

―――うるさい、あと五分…。

「…い……、江…君」

―――母さん、何で、“江井君”だなんて呼ぶんだ?
てか、何か、声が低くね?
少しずつ、ハッキリとしてくる声は、いつもの母親のモノより低い。というより、女の声ではない。そう、男の声だが、父親ではない。しかし、どこかで聞いた事がある。

「……井君」

―――そうだ、学校で聞いたことが…。ん?学校?

「江井君」

はっと顔を上げると、机の前に、笑顔の白浜が立っていた。

「そんなに、面白くない授業ですか?」

クスクスとクラスメイト達の笑い声が聞こえる。
早起きが祟って、居眠りしてしまっていたらしい。

「それとも、もう習うことはないくらい完璧ですか?」

微笑みを浮かべた白浜越しに、前の席の景一が、ニヤニヤとこちらを振り返っているのが見えた。

「chaptar3、明日までに訳してくるように」

「え…。全部…?」

まさか、違うだろうという思いを込めて聞き返す。

「ちょうど、明日からchaptar3に入りますから。全部、です」

けれど、白浜は、にっこりと、そう言い渡し、黒板の前に戻って行った。

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