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〜hot chocolate〜
21.
一日が終わり。帰り支度を終え、教室を出た時、廊下の端から、女子達の、悲鳴のような声が上がった。周りにつられて、声のした方を見ると、女子の輪の中心に、黒い頭が一つ、抜き出ていた。
人目を惹き付けるその姿―――。

―――堂、本だ…。
まさか…。

群がる女子達を鬱陶しげにあしらいながら、歩いてくる。

目があった。
あった瞬間、だるそうな瞳が、獲物を確認した獣のモノへと変わる。ぞわりと身の毛が逆立った。

―――ヤバイ!

一階へ向かう生徒達を掻き分けて、走る。
逃げないと、直感的にそう思った。

後ろの、女子の黄色い悲鳴がこちらへ移動している。
走りながら、振り向くと、堂本が追いかけてきていた。

―――わ、わらってる?

後ろを向いてばかりでは、スピードが落ちてしまう。だから、よく見なかったが、確かに、笑っていたように見えた。
浮かんでいたのは、微笑―――。けれど、放たれるオーラは、オモチャを見つけた猫科の生き物の、それ。
階段を駆け降りる。
何人か、ぶつかってしまったようだが、構っていられない。

猫科は猫科でも、家猫ではなく、ライオン…いや、あれは、豹だ…。
百獣の王なら、ライオンだが、群れず、よりしなやかさを感じさせる姿態。人波を割いて、迫ってくる黒い影……。
そう、獲物を追う黒い豹のようだ―――。

靴を履き替えて、逃げ帰ってしまいたい。が、その為に止まってる間に捕まってしまうだろう。
下駄箱へは行かず、反対の端にある三年の下駄箱の方へ走る。職員室があるが、気にしている状況ではない。

―――どこかに隠れよう。
隠れて、やり過ごすしかない。それから、帰ればいい。
どこか、どこか隠れられる場所…。
隠れる場所を探しながらも、後ろが気になって仕方がない。
女子の歓声がどんどん近づいてくる。
と、いう事は、距離が詰まっているという事、だ。

どこか…早くしないと…。

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