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〜hot chocolate〜
15.
―――あれ…?
目を開けると、そこには見知らぬ天井があった。周りに目をやる。カーテンに囲まれているようだ。
ベッドに寝かされている。自室ではない事は確かだか、何処なのかわからない。
身体を起こそうとした瞬間、下腹部に鈍い痛みが走った。

「…うっ…!」

驚きに、身体が起こせない。
その声に、シャッとカーテンが引かれ、

「良かった、そろそろ起こそうかと思ってたのよ」

と温厚そうな顔が現れた。

―――花ちゃん…?

現れたのは養護教諭の三宅花恵。年齢は生徒の親よりも少し、上だろうか。誰に対しても、分け隔てなく、接してくれる。朗らかな笑顔と、温和な人柄、ふくよかな体型が相まって、暖かな包容力を感じさせてくれる。
只でさえ、細い目は笑うと、更に、細くなり、その笑顔はグルメリポーターもこなす、某お笑いタレントに似ていた。
生徒達からは、“花ちゃん”と呼ばれ親しまれている。

―――て、ことは、保健室…でも。

「…何で、ココに…?」

と問いかけて、思い出した。

―――確か…オレ…。
先刻の出来事が過り、すぅっと血の気が引いた。

「あら、堂本くんが連れてきてくれたのよ?貧血で倒れたみたいだ、って言って。案外、イイトコあるのね」

と笑っている。

言いかけて止まってしまった祐輔を見て、カラカラと笑っていたのとは、一転、トーンが変わる。

「確かに、顔色良くないわね」

と顔を覗きこみ、

「本当に、大丈夫?」

訊いてきた。

―――気付かれたくない。
手をついて、身体を起こす。

「…大丈夫」

と、笑ってみた。
それを見ると、一瞬の間ののち、また、ニコニコと笑みを浮かべ、

「もうすぐ、閉める時間なんだけど、どう?帰れそう?」

「大丈夫」

「そう?夜更かしはダメよ。それから、ちゃんと食べないと。朝食、抜いたり、ジャンクフードばっかり食べちゃダメよ」

ベッドから降り、立ってみると、少し下半身に響いた。

「ああ、カバンも持って来てくれてるわよ」

カバンを渡される。

「何か、あったら。いつでもいらっしゃい」

「…ありがとう、花ちゃん」


花ちゃんに別れを告げ、痛む身体を庇いながら、家路へついた。

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