〜hot chocolate〜 18 チケットを買うと、食事を済ませ、チョココーティングのポップコーンと、ジュースを買い込んで、劇場内へ入った。コメディ映画は涙が出る程、笑えたし、アクション映画は手に汗握る程、ハラハラドキドキな展開だった。 「あー、面白かったな!」 「はいっ!」 「あそこのアノシーンがさぁ…」 近くのカフェでさっき観た映画の話をする。未来とは“ツボ”が合う。映画の話からゲームの話など、内容が飛ぶ。会話が弾む。気付けば、二時間程、話し込んでいた。外は暗くなっていた。 「そろそろ、帰るか」 「そうですね…」 店を出て、未来と家路に向かう。 未来の家とは途中まで、同じ道だ。 会話は続き、喋りながら二人並んで歩いていた。 が、未来から会話が途絶えた。未来が、数歩先を歩き出した。 「?」 しばらく、歩くと、 「先輩っ」 前を歩いていた未来がくるりと振り返るとつかつかと、無言で近付いてきた。 「な、何だよ?」 未来が肩に手を掛けると、背伸びをしてきた。目を閉じた顔が近付いてくる。 (うわ…。睫毛、長っ!) と、思っている間に、唇に、柔らかな未来の唇が触れた。 「う…むっ?!」 息を止め、ぐいぐいと、唇を押し付けてくるだけのキス。 「はあっ!」 未来が息を吸い込む。息が続かなくなったのか、唇が離れた。 肩に掛けられていた手が、首に回る腕に変わり、抱き付いてきて、呟いた。 「…好きです」 「はぁ?!」 突然のキスと告白に、あまりの驚きに変な声が出た。道行くの人達の視線をちらほら感じる。 きっと、男女のカップルがイチャついてるように見えているだろう。 「…やっぱり、気持ち悪いですよね…男同士で…」 うるうるとした大きな瞳で、見上げられると、まるで、こちらがイジメているかのような気にさせられる。 「…急にキスしたりして、ごめんなさいっ!…」 「いや、そうじゃないけど…」 首に回された腕に、きゅうっと力が籠った。未来が胸元へ顔を埋め、叫ぶ。 「オレ、男ですけど!でもっ、好きなんですっ!」 「俺も、男だけど」と言いかけてやめた。顔を上げ、キッと強く見詰めてきた小室の目が真剣だったからだ。 「考えてみてください!それじゃ!」 とするりと、腕を解くと、走って行ってしまった。 ―――生まれて初めて告白された。 まさか、人生初の告白されたのが、男からなんて。しかもその相手が、未来だなんて考えもしなかった。 (でも、嬉しいもんだな) 相手が、あんなに懐いてくれていた未来だった所為か、全く気持ち悪くなかった。それどころか、告白するだけでも勇気がいる事なのに、ましてや同性相手に告白するなんてもっと勇気がいるだろう。人にこんなに想われた事がなかったから、単純に嬉しかった。 「『好き』…か…」 ぼそりと呟く。 …ぎゅうっ (アレ?何だ、コレ…) ―――何故か、誰かを裏切っているような気がして、胸が締め付けられた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |