〜hot chocolate〜
12
キーンコーンカーンコーン
ホームルームのチャイムが鳴り終わると同時に、祐輔のクラスの戸を開けた。堂本は授業を途中で、抜けて来たので終了と同時に来る事が出来た。突然の堂本の登場に、担任の男性教師と男子生徒の息を飲む音。女子生徒の歓声。それを掻き分け、座ったままの祐輔の正面に立つ。
「早く、支度しろ」
当然、帰り支度をまだしていない祐輔を、急かす。
「え、あ、ちょっと待って下さいっ」
祐輔が慌てて帰り支度を済ませる。
「終わったか」
「あ、はい、すみません」
「じゃあ、行くぞ」
「はい…」
祐輔が席を立つ。と、前の席の景一が心配気にこちらを見ている。
「…ゆ、祐輔、お前…」
「ああ、大丈夫。今日は、ちょっと送って貰うだけだから」
「…そうか?何かあるんなら―――」
「大丈夫だって、何かあったらすぐ、お前に相談するよ」
「オイ、行くぞ!」
戸口から堂本のイラついた声が聞こえてきた。
「今、行きますっ!」
そう堂本に声を掛けてから、
「じゃあな、また明日」
と景一に別れを告げ、堂本のもとへ向かった。
祐輔が黙って二、三歩後ろをついてくる。
(チッ。怯えてんのか)
何故か、イラッとした。
「……そんな、後ろを歩いてんじゃねぇ!」
「…あ、はい!」
祐輔がタタッと、駆け寄ると、隣に並んで、歩き出した。
並んで歩く祐輔に、イラつきが少し薄れた。
が、しばらく並んで歩いていると、またイラついてきた。
―――祐輔との会話がない。
会話がない事自体はイラつきの原因ではない。祐輔とは無言でも苦痛ではない。ただ―――。
“こんな時”、なんて声を掛ければいいのか、わからないのかが腹立たしい。
相田なら、上手い事、優しく気の利いた言葉を掛けるのだろう。
(“穂積なら”?“気の利いた言葉”?)
俺は、何を考えている?
(―――ガラでもねぇ…)
何も出来ない自分へのモヤモヤと、それまで感じた事がなかった、相田への敗北感や劣等感が心中を渦巻く。初めての感情に、舌打ちが漏れる。
「チッ」
隣を歩く祐輔が反応した。
「あ、あの!もうこの辺でイイですっ!」
自分が面倒を掛けている所為だと思ったのか、祐輔が立ち止まりアワアワと言った。
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