〜hot chocolate〜 8 階段を駆け下りていく堂本についてゆく。 「あ、あの、行ってどうするんです?」 「……」 堂本は何も答えず、ズンズン進んでいく。生徒指導室に着くと、バンッと荒々しくドアを開けた。が、中にいた白浜は驚くでもなく、おっとりと言った。 「おや、江井くん遅かったですね」 そして、堂本を見遣ると、 「堂本くんは招いてなかったはずですが?」 と言った。 中に入り、怒っている堂本は、また、乱暴にドアを閉めると、 「何の用だ」 「君に用はありませんよ」 「コイツに、何の用だと訊いてる」 「昨日の話ですよ」 ピリッ 堂本の纏った怒気が、膨れ上がった。 ギリッ 堂本の歯軋りが聞こえた。 「話す事はねぇ」 「君とではありませんよ」 白浜がこちらを見ると、にこりと微笑み、 「ねぇ、江井くん」 と言った。 「話す事はねぇ、つってんだろ!」 今にも殴り掛かりそうな堂本と、それを逆撫でするかのようなまったりとした態度の白浜を、ハラハラと見比べる。 「君が決めることではないでしょう?」 「二度とコイツに関わるな」 確かに、堂本が決める事ではないが、白浜とは昨日の話などしたくないし、授業以外で関わりたくなかった。 「それこそ、君が決めることではないでしょう?ねぇ、江井くん?」 白浜は微笑みを絶やさない。 「だから、二度とコイツに関わるなっつってんだろ!」 堂本が声を荒げる。 「堂本くん落ち着いて。さっきから言ってるでしょう?私は江井くんと話したいんですよ」 ギリッ また、堂本の歯軋りが聞こえた。 「うるせえ!コイツとはもう関わらせ―――」 限界が、来たのか、堂本の身体が動いた。 「先輩!」 それを制する為、声を上げた。ピタリと堂本の動きが止まり、こちらを振り返った。 「…オレ、昨日の事は話したくもありませんし、もう、先生とは、関わりたくありませんっ」 そう自ら白浜へ告げる。と、堂本が白浜の胸倉を掴んだ。 「先輩!」 今度は制止の言葉は間に合わなかった。 「そういう事だ。二度と、コイツに触れるんじゃねぇぞ!」 「全く“熱い”ね。わかったから、離してくれないかい?」 そう言われても、堂本は胸倉を掴んだまま離さず、睨み付けている。が、白浜はいつも通りの“爽やかな好青年”の表情で、全く動じていない。 「先輩!」 堂本の腕を掴んで、引き剥がそうとするが、ビクともしない。自分の事で、しかも、昨日の事での乱闘沙汰は避けたい。自分の事で、“仮にも”教師を殴って欲しくない。 [*前へ][次へ#] [戻る] |