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〜hot chocolate〜
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―――何なんだよ!何で、何で…。

家に着き、部屋へ入る。
カバンを足元に落とすと、ベッドにバタリと倒れ込み、枕に顔を埋めた。

また、逃げられなかった―――。
あと少しでも、強ければ、逃げきれたのだろうか。
その、爪を、牙を、ちらつかされただけで、ほんの少し、首を掴まれただけで、逆らう事も出来なくなって…。
いや、中途半端にやり返せば、『大人しくさせられてからヤラれる』事になるだけだったろう。

全く、一体、何が面白いのか。

―――もしかすると、ヘンなモノでも食べたのかも知れない。
そうでもなければ、考えられない。
一回だけならまだしも…。いや、一時の気の迷いにしたって、限度があるだろう。
何だって、あんな事…。
それでも、一回だけならまだ…。

それなのに―――。

二度目ともなると(ある意味三度目、だが)、何か、麻痺してしまった気がする。初めほどのショックはない。
だからといって、受け入れたわけでもないし、喜んでもいない。
心の中の(身体もだが)違和感が消えない。

それに、どうしてもわからない。

『何で、オレがこんな目に』―――。

何故、あんな目に遭うのか。
しかも、何故、自分が、なのか。
女に不自由はしていないに決まっているし。そもそも、男に興味があるようには思えない。万が一、あったとして、相手に自分はないだろう。自分の事くらいわかっている。哀しい哉、どう贔屓目に見ても、どこをとって見ても、“普通”の域を出ないという事くらい…。
それを、わざわざ、待ち伏せたり、追い掛け回したりしてまで…。
その上、“次”があるような事を言っていた気がする。

―――ひょっとしたら、どこかでケンカした際に、頭を打ったのかも知れない。
いや、だとしてもわからない。

仰向けになり、明かりをつけていない蛍光灯をぼんやりと眺めた。

母親の、夕食が出来た事を知らせる声がする。
身体を起こす。
しばらく、そのまま、ベッドに腰掛けていると、また、呼ぶ声が聞こえた。
そこで、ようやく部屋を出た。



もし、万が一、メールか電話がくるような事があったら―――。
とりあえず、理由をつけて断ってみようと思っていた。前回の呼び出しを無視した理由を問われ、「用があった」と答えた時、「だったらそう言え」と返ってきた事を思い出したからだ。もしかすると、すっぽかしたりしなければ、案外、無事に済むのかも知れないし。

いやいや、そろそろ己れのしている事のオカシサに、気付いたに違いない。
もう、呼び出したりなんて、しないだろう。
現に、あれから、メールもなければ、電話もないし。(何時、来るか、とビクビクしているが…)
とにかく、避けられる事なら避けたい。
けれど、もう、そこまで、自分に興味はないであろう。きっと、そうだ。

と、ぐるぐると、“甘い事”を考えながら、過ごしていた。

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あきゅろす。
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