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おはなし3

 再びベッドに横になると、両手を枕にして仰向けになり、真由は腑に落ちないままもやもやとした気分を持て余していた。
「あー、もう何なのー。当たりって何が当たったわけ。」
思わずぼそっと呟くと、思いがけず、
「すみません、トナリマチ冒険ツアーです。」
という細い声が返ってきた。
 「えっ、何今の。」
驚いて、がバリと体を起こし、きょろきょろ辺りを見回す。
 「あ、すみません、ここです。ここ。」
今度は枕元からはっきり聞こえてきて、真由は目を真ん丸にしてそちらを見た。
 そこにいたのは、小さなハツカネズミで、細いひげをせわしなく動かし、鼻をひくひくさせている。
「私ども、ネズミ観光協会では、年に一度、お一人様限りで人間のお子様をトナリマチ冒険ツアーにご招待しておりまして、今年は見事真由さんが当選されたというわけでございます。」
そして、早口にそうまくしたてた。
「なにこれ…。」
ネズミが、しゃべっている。錯覚かと思い目をこすってみるが、何度見てもやっぱり枕元に白いハツカネズミがいる。そして、髭を動かしながら、せわしなくしゃべっているのだ。
「ただ、招待状に不手際があったようで、通常なら葉書や封書でわかりやすい招待状が届くはずなのですが、なぜか、アイスの棒が招待状になってしまったようで…」
「しゃべってる…」
あまりに驚いたので、呆然としている真由に向って、ネズミはのんきにこんなことをいう。
「おや、お嬢さんは魔法をご存じない。」
「魔法って…。え、私、頭がおかしくなったんだ…。」
思わず口に出してそういうと、ネズミは面白そうに鼻を鳴らして、更に、
「いえいえ、いたって正常ですよ。魔法で、私と真由さんは会話することができているのです。でなけりゃ、真由さんには私の言葉は、キーキーとしか聞こえませんよ。」
という。
「…どういうメカニズムなんだろう、声帯とかそういうの、完全無視だよね…。というか、ネズミってそういう、思考とか、普通しなくないかな。ていうか、しない。うん、しないよね。」
「あの、真由さん、とにかくですね…」
 ネズミがそこまで言ったとき、階段の下から母親が呼ぶ声がした。
「真由、何大きな声で独り言言ってるの。ご飯できたわよー。」
それを聞いてネズミはちょっと慌てたように体を左右に振りながら、
「とにかく、明日朝9時にお迎えに上がりますので、支度しておいてくださいね。」
と言って、来た時と同じようにいきなりどこかへ消えた。
真由はしばらく呆然としていたが、ふと考えなおした。
(私、多分、変な夢見てたんだ、きっと。だって、魔法でネズミがしゃべるとか、突然消えるとか、おかしいもん。暑さでちょっと疲れてたのかも。)
今まで目の前で起こっていたことなのだけれど、にわかには信じられず、夢だということにして、とりあえずご飯を食べに階下に降りていった。

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あきゅろす。
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