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おはなし3

「ねぇ真由、それ急いでもらってきてよ。そしたらお姉ちゃんが帰ってくる前に間に合うかも。」
「えー、結局私が行くんじゃん」
「アイス代の百円はお駄賃として真由にあげるけど。」
「行く。」
「お姉ちゃんもうすぐ帰ってくるから、できるだけ急いで行ってきてね。」
「はいはい。」
 ご機嫌な母親に見送られ、真由はまた再び、むっとくる暑さの中に飛び出した。
(たぶん最近当たり付きに変わったんだろうな。この前食べたときは当たり付きじゃなかったもん。)
そんなことを考えながら、同じルートでコンビニへと自転車を走らせ、肌寒い店内に再び入ると、同じ商品と当たりの棒を持って、レジに向かう。すると、先ほどと同じ店員がいたので、その店員に、
「これ、当たったんですけど」
と声をかけた。
「あ、はい。」
と返事をした店員だったが、すぐに怪訝そうな顔になり、ちょっと待っててください、と言って、事務所に引っ込んだ。
そして、しばらくしてその店員は首をかしげながら、出てくるなり、
「すみません、この当たり、本当にこのアイスですか。他のアイスの間違いじゃないですか。このアイス、当たりつきじゃないんですけど。」
と言う。
 「えっ。」
驚いたのは真由のほうだ。
「だって、このアイス、ちょっと前にここで買ったんですよ。ほら。」
さっき買ったばかりで、まだレシートが財布の中に入っていたので、真由はそれを店員に見せた。
「ああ、本当ですね…。おかしいなぁ。でも、これは当たりつきじゃないんで、すいませんけど製造元のほうに問い合わせてみてください。」
そう言われてしまうと、真由もどうしようもなくなり、結局お小遣いとしてもらった百円で、同じアイスを買って帰った。
 「ただいまー。」
「あっ、ちょっと真由おそーい。待ちくだびれちゃったじゃん。なんでアイス一個もらうだけなのにこんなに時間がかかったわけ。」
「あー、お姉ちゃん、帰ってたんだ。はい、アイス。もう、何か知らないけど、当たりつきじゃないから製造元に問い合わせてって言われた。」
「えー、何それ。」
姉ではなく、今まで台所で夕飯の準備をしていたらしい母親が、顔を出して言った。
「だって、棒に当たりって書いてあったじゃない。」
「そうなんだけど、だめだったんだもん。もうわけわかんないし、疲れたからちょっと寝る。ご飯できたら起こして。」
寝るって、またあんたは、と母親が何か言いかけたが、返事をするのも面倒で、無視して部屋に戻った。

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