現代文 同級生のお姫さま(プリパラ、幸多みちる) この世界にはプリパラという概念がある。…なんだか最近よくあるラノベのタイトルみたいになってしまったが、本当にその言葉通りなのだから仕方がない。 ここは私立アボカド学園中等部。 ついこの間までこの街には男子のプリパラしかなかったのだが、そんなの一体嘘だったかのように今では女の子たちのプリパラが勢いを増している。 巷で人気のプリパラユニット『MY DREAM』のミーチル様こと幸多みちるさんは、私のクラスメイトだ。と言っても本当にただ同じクラスだというだけで、まともに話したことはほとんどない。まぁ彼女自身も普段あまり人と関わらないようなので、むしろ誰かといる所を見かけるほうが珍しかった。 だから油断していたのかもしれない。 「っあ、幸多さん…」 「!わわっ、ナナコさん…。ご、ごめんなさいっ」 「い、いやこっちこそごめん」 放課後の人気のない廊下で偶然にも、幸多さんと鉢合わせしたのだ。衝突こそしなかったものの曲がり角でのふとした出会いだったので、互いになんとなく謝ってしまう。そして彼女の顔を一瞬でもかなりの至近距離で見てしまった私は、思わずバッと口元を片手で覆う。 いくらライブだとはいえ…クラスメイトのあんなセクシーな…お、大人びた姿を見て動揺しないほうがおかしいだろ。いや、私がおかしいのか?だって普段はこんなにきょどってて大人しい子が…、ライブであんな…投げキッスとかしてくるんだよ!? 「…あ、あの…ナナコさん…?」 「な、に?」 「もしかして熱があるんじゃ…。顔が、赤いですよ?」 「!」 ち、近い!!というか、良い子だな幸多さん! せっかく距離を置いたというのに今度は幸田さん自らずいっと私の顔を窺うように覗き込んできて、私の額に手を当ててきた。その手が少しひんやりしていて心地良いものだから、その温度差になんだか更に恥ずかしくなる。 「あ、やっぱり少し熱いんじゃ…」 「なっ、なんでもない!大丈夫だから、本当に!」 「そ、そうですか?」 このままでは恥ずか死してしまう!! 額に置かれた彼女の手をやんわりと外し、そのまま立ち去れば…良かったのだが。せっかくの機会だからと、私はつい一言余計に言ってしまう。 「ねぇ幸多さん」 「はい?」 「……えっと…応援、してるから…。頑張ってね、アイドル」 「!」 ああもう駄目、これ以上見てたら本当に熱が出そう。 それじゃ、と今度こそ身を翻してその場を立ち去ろうとしたその時。まさか幸多さんに腕を引かれるとは思っていなかったので、また少しバランスを崩して幸多さんとの距離が縮まる。 ちょっ、本当に私を殺す気ですか! 「えっと…ナナコさん、プリパラは…。行ったこと、ありますか?」 「え、いや…ないけど…」 「じゃ、じゃあ」 一緒に行きませんか? だなんて、彼女から言われてしまっては、断れるはずがないじゃないか。 [*前へ] |