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夕轟 (高校生×社会人)
(高校生×社会人)





【Squall】


学校の帰り道。
この街で一番高いビルのガラス張りの窓一面が真っ赤に染まっていた。
街も一面夕焼け色に染まっている。

なんて夕日だ。

足を止めてビルを見上げて、思う。

ここに、あの人はいるんだ。

当人は赤なんて似合わない人だけれど、不思議と、夕焼けとあの人は似合っている。




ああ、
たかが、夕日じゃないか。

そう自分に言い聞かせてみる。
それにさっきメールが届いていた。今日は残業だって。


でも、
こんなに綺麗な夕焼けなんだ。









【Cloud】


息切れするほど走ったのは何年ぶりだろう。
なんとなく、いるんじゃないかと予感はあったのだ。
だから前もって、今日の残業は半端じゃなく遅いから…とメールを入れていたのに。

『合鍵は受け取らない』と訳の分からないポリシーを持っているスコールは、いつものように俺の部屋の前で佇んで、暗い夜空を眺めていた。


「なにをしてる」
「夜になるのを見ていた」
「だから遅くなるって言っただろう」
「ああ、知ってる」


わかっていた。

職場のビルから見た夕日は、それはそれは赤かったから。
だから、あんたが来てるんじゃないかと思って、これでも急いで終わらせて帰って来たんだ。

足元に置いてあった鞄とコンビニの袋を持って、スコールはやっと俺の方を見た。


「こんな所で待つなよ。
風邪ひくぞ」
「風邪か…。ここ何年もひいたことない」


スコールは、ロールケーキとポテチの入っているコンビニの袋を俺に渡して、ちょっと肩を竦めてみせた。

自分の部屋の鍵を出しながらドアの前、声を抑えて極力のさりげなさを装って、スコールに言う。


「寄ってくんだろ」


ああ。いつものことなのに、いつまで経っても誘い慣れない。
心臓がバクバクと早鐘を打つ。
でも、これは走って帰ってきた所為だ、そう言い聞かせて彼を見る。


「あんた明日は?」
「……休みだ」


俺の言葉にスコールの目が柔らかく細まり、頷いた。
その口元に浮かんだ笑みに見惚れているうちに、俺の手からするりと鍵を取ってスコールがドアを開けた。


「おかえり、クラウド」
「…ただいま」


おかえりの言葉に心が躍る。
こんなに嬉しいなんて、俺もたいがい終わっている気がした。







夕轟 -yuu todoroki- (夕暮れ時、恋心のために胸が騒ぐこと)



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あきゅろす。
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