決意 (2012初詣)
一月も半ばの、普通の日。
正月三が日を過ぎて、さらに成人式も過ぎた神社は、巫女さんもいなければ参拝客もいなかった。
まぁ地元のこの神社は元々こじんまりとしすぎているので、出店なんてものは三が日でもお祭りでも見たことなかったが。
「なぁ、スコール。今頃になって何を神頼みするんだ?
お参りはこの前みんなで行ったよな」
「違う、クラウド。あれは合格祈願だろう。
今日は、決意を聞かせる為に来たんだ」
え?と見たスコールの顔は、その言葉に相応しくまっすぐに前を見つめていた。
「決意?」
なんだ、決意って?
ただの初詣じゃないのかな?
お参りなんて『今年いい事がありますように』とか『健康でありますように』とか言うんじゃないのか?
神頼みに何をお願いすればいいのかすらわからない俺は、皆に倣ってせいぜい手を合わせて頭を下げるだけだ。
『決意』なんて、頭の中のどこをどう探せば出てくるんだろう。
わからなくて訊いた。
「決意ってなんだ?」
「まぁ、所信表明みたいなものだな」
所信表明??
余計に訳がわからなくなった。
この幼馴染は、昔から頭がよかったんだよな。…良すぎて、たまに解らないことを言うのだけれど。
「あー…そう。…それ、やるのか」
「そのためにここに来たんだろうが」
「…そうか」
俺が曖昧に頷くと、スコールは『行くぞ』と言って静かにたたずむ鳥居に向かい歩き出した。
シンと静まり返った境内。
静寂が占め、神が奉られている場所。
俺とスコールしかいない場所。
先を行くスコール。半歩後ろからついて行く俺。
ながく伸びる影。
足の裏には、砂利の感触。
沈みかける夕日。
新しい年をとっくに刻み始めたってのに、何故世界はこんなに寂しいんだろう。
なんて孤独なんだろう。
夕日のせいだろうか。
人気がない神社だからだろうか。
「…スコール」
なんだか哀しくなってきた。
ああ、俺とスコールがまだ子供だったら良かったのに。
そうしたら、少しもためらわずに俺は彼と手を繋いだだろう。
だだっぴろい世界にひとりぼっちにならないように、彼と手を繋いだだろう。
この寂しさを、空恐ろしさをまぎらわすために、彼と手を繋いだだろう。
たった半歩のこの距離が、なんて遠いんだろう。
「その決意とやらは叶えられそうなのか?」
「叶えてもらう訳じゃない。
決意を聞かせて、自分で叶えるんだ」
「そうか…あんたらしいな」
「クラウド、あんたは?」
「え?」
「あんたも叶えるんだろう?大丈夫なのか?」
「…あ、ああ……さぁ、どうだろう」
「頼りないな」
この、二人の間の、30センチの距離を飛び越える勇気が欲しい。
中途半端に大人になってしまった俺に、この距離は長かった。
飛び越える勇気なんて、無理な話なのかな。
「まぁ、いい。俺に任せておけ。
あんたの分もちゃんと叶えてやる」
そう言って、スコールは俺の手をしっかり握って本殿に向かって歩き出した。
……ああ、くそ。
あんたなんて、ちっともわかってないくせに!
fin
わかりやすいスコールの決意(笑)
リクで頂いて挫折したのを書きなおし。
やっぱり季節なので初詣のお話も一応書いておこうかと思ったんですが、まったくラブラブしてません。ごめん。
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