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CONTRAST 1 (スコ誕2011)
(パラレルです。二人は俳優さん)






バケットを1本、ブリーチーズに生ハム、ちょっと頑張ってキャビアの瓶詰なんて買ってみようか。
彼の好きなチョコレートは季節的に向かないから、友人にお勧めのケーキを頼んでおいた。それはもう冷蔵庫に入っている。
でも念のために、なにか焼き菓子を買っておこう。

(買う物のはこれくらいでよかったか…?)

冷蔵庫の中身を思い浮かべながら、スコールはストアーの陳列棚からそれらを無造作に取るとキャスター付きのカートに入れた。
お酒のコーナーに行って並んでいる棚の前で立ち止まると、しばらく考え込んだ。


なにせ、三週間ぶりの二人そろってのオフなのだ、今日は。
ひとつ屋根の下で暮らして、同じベッドで眠っているのだから、毎朝毎晩顔だけは合わせる。
でも、ここのところ二人ともスケジュールが立て込んでいて、すれ違いでまともに会話すらしていない。
クラウドは、昨夜遅く(どちらかと言えば今朝早く)某化粧品メーカーのCF撮りが終わって、帰ってくるなりベッドに倒れ込んで眠ってしまった。
もう、午後の日差しは心持ち西に傾きかけているが、おそらくまだ泥のように眠り込んでいるのだろう。
本人は言わないがMGに聞いたところによると、俺の誕生日だから――とクラウドは無理矢理休みをもぎ取ってくれたらしい。
スコールのほうはと言えば、5日間のオフがまだ2日残っている。
この貴重な時間を二人でどう過ごすか、スコールは考えに考え抜いた結果、とにかく今夜は一緒に食事して飲んで、久々にゆっくりしよう…と普通の結論を出した。
クラウドが目覚めた時には準備万端整えておこうと、彼はこうして買出しにきている。
この際、自分の誕生日の用意を自分でしなくてはならない事くらい、スコールにとっては些細なことだ。
帰ってきたクラウドは何も言わずに眠ってしまったので、彼の考えは聞いていないけれど、否と言うとは思えない。


スコールがクラウドを初めて見たのは、スクリーンの中だった。
ほぼ、一目惚れに近い憧れを持ってスコールはこの世界に入り、無事にデビューを果たした。
実際にクラウドと逢えたのは『凹国心』で共演した時だ。
クラウドは、スコールの名が売れ出した頃には、もう手なんて届くわけがない位の大スターだった。
二人の関係が友人から恋人へと発展するまで紆余曲折はあったが、結局のところ、クラウドがスコールの所にころがり込んできて来てくれて、今は絶賛同居中だ。




スコールは、透明なジンの瓶に手を伸ばしカートに入れ、次に上等なシャンパン数本とにらめっこして一本を取った。
そのまま視線が赤ワインの上をさ迷ってから、結局、バドワイザーのパックを2つ手にとった。

(いつものヤツの方がいいかもしれないからな)

あれこれ飲んでも、最後には『やっぱりビールがいい』になるクラウドを思い出し、苦笑しながらカートに入れて、ついでにトニックウォーターも数本入れて歩き出した。
いつもよりも三割増しで機嫌がよさそうな顔は、彼のファンが見ていたら黄色い悲鳴モノだろう。

(アーヴァインが土産に持ってきたバーボンはまだあったな。
クラウドがこっそり飲んでなきゃ、その筈だ…)

口の中で呟いて、生鮮食料品売り場で、トマトときゅうりとレタスをみつくろって、レジへと辿り付いた。
精算を済ませ、食事の材料の入った大きな袋を右手で抱えて、左手にはお酒の瓶の入った白いビニールを下げて、駐車場へと歩き出した。

天気は上々。
歩道に植えられた木々は黒々と葉の影を落とし、午後の日差しは相変わらずギラギラと暑い。

(もっとも、あんたが起きる頃には、とっくに夜の帳って頃かもしれないが)

今夜のこれからのことを考えれば、なおさらスコールの機嫌もよくなる。
駐車場で彼にサインを求めてきた子供に、フッと笑うとペンを取って、普段から滅多にしないサインをしてやった。

その時、突然目に飛び込んできたのは、視界の木々の葉が途切れた間に、壁一面に貼られている特大のポスター。


「あ……クラウドか」


思わず、口に出してしまっていた。

(これが例の化粧品のか。散々、嫌がっていたヤツだ)

スコールは心の中で呟く。
どうして男の自分が化粧品のなんか!と憤慨していたクラウド。だが結局、メインは他にちゃんと女性がいる、と数ヶ月かかって口説き落とされて受ける事になった仕事だ。
CFの初出しの日について、この前からCMのCMまでやっていた。


そのポスターは3枚あった。
1枚は黒い背景に黒い布を頭からかけて、顔を半分だけ覗かせている中性的なクラウド。
彼の煌く金髪はその色合いを抑えられ、挑発的な揺らめきを見せる瞳と長い睫、紅を差しているようには見えない紅い唇が煽情的だ。
もう1枚は、長いストレートのプラチナブロンドの美しい女性。
白い布をまとい、綺麗な微笑みで髪を揺らして軽やかに踊っている。

そして、もう一枚。
全体的にダークな色調を抑えた背景の中、黒のタキシードを着崩してタイを首にかけ、全身を黒に染めるクラウド。
目線は下に。長い金の睫が微かにブルーの影を落としているのが、物凄く大人びて見える。
暗いアンティークな背景と相まって、それはそれはとても艶やかだった。
そして、その構図の上に一段と華を添えているのは、クラウドの腕の中でまどろむように目を伏せた、彼よりも小柄な美しい女性。
クラウドよりずっと年上であろうが、どこかに無垢な幼さが残るその表情。
その長いストレートの銀の髪はクラウドの指に絡み、肩に、腕に、胸に、と惜しげも無く広がっていた。
クラウドの光の髪と相まって、例えて言うなら、闇の中に射す幾筋もの光の糸のようだ。

(凄い。これを見れば、前の2枚はただの紙切れだ)

スコールはただポスターの前にたたずみ、クラウドとその女性の織り成す見事なコントラストに見入っていた。










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