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あんたはペット 8





「おい、あんたあれで良かったのか?」


クラウドは、見るともなしにテレビのチャンネルを変え続けている。
彼の前に温かいココアを置いて、スコールは尋ねた。

神羅の二人が帰り、セルフィとアーヴァインが帰り、当のクラウドは何を言うでも無く今もぼんやりしている。


「…いなくなった方が良かったかな」
「そういうわけじゃない」


冷めないうちに飲め、と促すとクラウドはカップをのろのろと取り上げて口をつけた。


「あったかい…」
「甘すぎたか?」
「ううん。おいしい」
「そうか」


クラウドは口元だけでふんわりと笑んだ。
最近、彼がよく見せてくれる笑みだ。
見るとなんだかほっこりする。



あの後は凄かった。

女は(後で知ったがシスネと言うらしい)『もう食われちゃったの!?』と悲鳴をあげ、レノは『この鬼畜野郎!』とロッドで俺に襲い掛かり、セルフィは『はんちょはクラちゃんの立派な飼主なんや!』とフォローにもならないことを叫び、アーヴァインは『恋人じゃなくってペット!?なんてマニアックなんだ、羨ましいッ!』と叫んで俺に殴られた。

結果。
あわれ、玄関とドアは半壊。
被害は廊下にまで及んだが、スコールが死守したので部屋の中は無事だった。
あまりの騒ぎに大家まで飛んできて、こってりと搾られ破損部は弁償となった。
勿論、神羅に請求するつもりだ。

なんとか誤解は解けたものの、レノは帰り際に俺を一瞥して『アイツに手を出したら赦さねぇ』と吐き捨てていった。
やっぱり、あいつらはストーカーと一緒だ。
スコールはまだムカついていたが、クラウドはここに居ると言ったのだからヨシとしよう、と思った。




「俺…前にいろいろあったって言ったよな…」


ソファーの隣に座った俺の肩に、初めてクラウドが凭れかかってきた。
なぜか、心臓が騒がしくなる。


「…スコールは…一緒にいた人が突然居なくなったらどうする?」


俺はすぐ下にあるクラウドの頭を見つめた。
旋毛は見えるがその表情は読めない。


「いなくなったのか?」
「…いなくなった、って言うか…」


クラウドは俯いたままだ。
握り締めてしまっていたココアのマグをテーブルに置いて、彼は言葉を続ける。


「俺は…会いたいんだ。
できるなら追っていきたい。
できることならもう一度取り戻したいんだ…。
これって、いけないかな…」
「いや。いけなくはないが。
待つ、っていうのは無いのか?
それとも…待ってても帰ってこない事がわかってるとか?」


よく考えると、クラウドは最初に逢った時から、どこか変わっていた気がする。


「自らの意思で、追いかけられたくなくて行ってしまったなら、俺は追わないだろう」
「うん。
……わかってる。
でも、俺は会いたい。
…会って伝えたい事が一杯あるんだ…」
「俺は…言いたくても言えない事の方が、言葉には多いと思う。
全てを伝えてからの別れなんて、ない」
「スコール…」


クラウドは、俺の肩口に寄りかかったまましばらく俯いていた。
その身体が震えていた。
泣いていたのかもしれない。


(あんたを泣かせるのは誰なんだ?
俺なら…俺だったら、あんたを一人になんてしないのに…)


俺はそれ以上何も言えなかった。










朝起きると、クラウドは消えていた。
ソファーにきちんと畳んだ毛布が置いてあり、テーブルには手紙があった。



『スコールへ

今日からしばらく留守にするけど、心配しないで。
帰ってきて落ち込んでたら「おかえり」って言ってくれ。
元気になってたら、またゴハン食べさせてくれ。
では、いってきます。

P.S.
セルフィに「クラちゃん」呼びを止めさせてくれ。

クラウド』





読んで、俺は少し笑った。

俺はクラウドを待つことにした。

彼が帰れる場所になろう。
帰ってきたら『おかえりクラウド』と伝えてやろうと思った。









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あきゅろす。
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