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あんたはペット 7






「スコール…」


クラウドがこちらを見ている。


「女だったが、例のストーカーとは別口か?
心当たりは?」
「…わからない」
「なら、俺が出る」

「何の話なんだ、スコール?」
「ストーカーだって!?
やだやだ、ヤバいよ!
クラちゃん行かせるのは危な過ぎ!」


セルフィが興奮したように玄関のドアを睨んで力説した。
俺も同じように思ったので頷いた。
こういう時は、説明入らずで理解できる彼女の頭の回転の良さが助かる。
どうしよう武器なんて持って来てないよ、と騒ぐ二人を尻目に、クラウドは静かにスコールに言った。


「スコール…ごめん。
でも、俺は大丈夫だから、一人で行く」


そう言って、視線を下方に向けて横をすり抜けて行こうとするクラウドの腕を、スコールは咄嗟に掴んだ。
何を言ったらいいのか考えるより先に、言葉は口をついていた。


「あんたはペットだからな。
飼い主が責任を持つ必要がある」
「…スコール」
「もう、はんちょったら、そんな言い方して。
ちゃんと『心配してるんだ』って言わなきゃ!」
「でも、ほら、三対一だったら万が一の事が起きても勝てるんじゃない?ねっ!」


セルフィとアーヴァインの言葉を背に、俺はベッドルームのケースからライオンハートを取り、玄関に向った。



警戒しながらゆっくりとドアを開く。
そこには、黒スーツに赤毛の派手な男と茶髪の女が立っていた。

(なんだ、こいつらは?)

スコールが睨みつけるのを無視して、男は彼の後ろにいるクラウドに片手を上げた。


「よっ。久しぶりなんだぞ、と」
「……何しに来た?」

(知り合いか…?)


クラウドが俺の横に出てきた。
空気が一気に冷える。表情が一切消え、冷たい硬質な人形を思わせる美貌が際立つ。
それは、見たことがないクラウドの顔だった。


「コワイ顔するなよ、と。
顔見知りがいた方が安心すんだろ」
「……」
「あ、あなたにお話があります」


赤毛の男と女はそう言ってクラウドに話しかけると、今度はスコール達に向き直った。


「はじめまして。名乗る事はできませんが――」
「名乗れよ、と。タークスのレノだ」
「レノ!!」
「身元も明かさねーで話が通ると思ってんのかァ?」

(タークス…神羅の情報部か。
そいつらが、なぜクラウドに)


男が言ってることは正しいが、こちらを無視して言い合いを始めそうな二人がウザい。
会話を遮って言った。


「クラウドに何の用だ?」
「…すみません、席を外していただけませんか?お願いします」


丁寧に頭を下げられて、危うく頷きそうになる所を思いとどまった。
礼儀正しく言われようが危険人物(仮)だ。


「不審者を家に上げたまま、目を離すほど莫迦じゃない」
「そうよ!アタシはクラちゃんの親友だもの!
他人に聞かれたら困るような事を言うつもり!?」
「そ、そうだよ!」

(ちょっと待て。いつ、親友になった!?)


思わずクラウドの顔を見てしまったが、彼は相変わらず無表情のまま二人を見据えている。


「レノ、何の用だ?」


クラウドの声が響いた。
渋々と言った感じで口を開く。


「迎えに来たんだぞ、と。ありがたく思え」
「あなたを保護したくてわざわざここまで来たんです」
「帰れ」
「そうはいかないんだよな。社長の命令だぞ、と」

「社長って?…神羅の社長さん?
ええーっ!!!クラちゃん、知り合いなの!?」

(保護って!? 神羅の社長って!?
あんたとどういう関係なんだ!?
どういうことだ、もしかして……)


幸いにも顔には出ずに驚いて、そのままぐるぐるしているスコール。
その傍らで、アーヴァインが大っぴらに口をぽかんと開けている。
『もしかしてクラちゃんって大物?』とセルフィが小声で囁いてきた。


「社長は例のストーカーに責任を感じていらっしゃるんです。
ですから、クラウドさんを保護したいとおっしゃってます」
「ルーファウスに世話になる謂れはない」
「ただ単に、心配してるんだぞ、と。
勿論、ツォンさんも俺たちもだ。
あいつはお前に異様に執着してるから、何があってもおかしくないだろ」

(何かあってたまるか!
ああ。なんだかムカムカする。
クラウドを無理強いして連れて行こうとしてるのか!?
結局、こいつらもストーカー変わらない。同じ穴の狢じゃないか!)

「ね〜ね〜、しっつもーん」


セルフィの声が割って入る。
そして、俺が一番訊きたかったことを訊いてくれた。


「ストーカーって誰?」
「「「・・・・・・」」」

(何故、そこで黙り込む?)

「お嬢ちゃん…世の中には知らない方がイイことがあるんだぞ、と」
「ストーカーなら知ってなきゃ危ないやん」

(その通りだ。そんなに言いたくないのか?
…ああ、そうか。言えないのか。
話の前後からすると、どうやら神羅の関係者らしいし)


「と、とにかくクラウドさん。一緒に来ていただけませんか。
出来るだけの事をしますので」


女が慌てたように言った。
レノと言う男も横でうんうんと頷いている。

皆の視線がクラウドに集まる。
クラウドは首を横に振り、ゆっくりと言った。


「俺…ここに居たい。
スコールのペットだし」




クラウドの言葉に、辺りに悲鳴と怒号が響いた。










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