あんたはペット 1
スコール・レオンハート。
弱冠17歳にしてガーデンの頂点に立つ伝説のSeeD。俗に言うエリート。
長身でスラリと手足も長く、アンバーヘアーに彩られた精悍な貌。
父親は大国の大統領。魔女の騎士で恋人。
人生の勝ち組。
必要なものはなんでも揃っていて、不満なんてこれっぽっちもない――
「そんなわけあるか!」
孤高の獅子、スコール・レオンハートはご立腹だった。
一日の任務を終え、スコールは自宅に急いでいた。
その足取りはズカズカと些か乱暴だった。
(俺は本当に忙しかったんだ!
徹夜明けだったんだ!
仕事が詰まっていたんだ!
でも、リノアの奴がどうしても重要な用事があるって言って、わざわざガーデンを通してまで言ってくるから、忙しい合間を縫って行ったのに。
『ただ会いたかったの』
って…なんなんだ!!)
抱き付いてくるリノアを、嫌な顔を見せずになんとか宥めすかすのがどれだけ苦痛で苦労したか。
そうして、とんぼ返りでガーデンに戻ったのだ。
(帰って来たら来たで、外交問題で揉めているからどうにかしてくれとか。
行ったら行ったで、俺にもっと愛想よくしろだと?
放っておいてくれ!
表情筋が動かないのは生まれつきだ。
それでも、少しでもとこっちが努力してやれば、余裕こいててムカつくだと?!
何様のつもりだ!!)
(どいつもこいつもなんて勝手な事ばかり!!)
…誰にでも、不満、悩みの一つや二つはあるものだ。
スコールも類に漏れず、任務に不満はなくても自分の周囲の環境には不満があるらしい。
ただそれを周りにぶつけるほど子供なワケでもない。
さらに言えば、口を無くしたのかと言われるほど無口で感情が出ないのが災いしているが、心の中ではこれでもかくらいの饒舌である。
(俺にどうしろっていうんだ、まったく。
そんなに俺に不満があるなら他のヤツに回せ!)
地面を踏み抜かんが勢いで自宅へと進んでいく。
ここは、つい最近スコールが引越したマンションだ。
最近、ガーデンでも周囲の目が煩くいろいろ支障が出てきたので、仕方なく学園長の許可を得てバラム市内に住むことにしたのだった。
(なんだこれは)
マンション入り口を塞ぐように、大きなダンボールが置いてあった。
(何だこの粗大ゴミは?どこの馬鹿が出したんだ?)
ムカムカしていた怒りに任せて、長い足でついつい箱にローキックかましてしまってからハッとする。
(ヤバイ。ゴミだったら飛び散るよな?…というか手応えが重い?)
ダンボールはゆっくりと横倒しになり、内容物がドサリとはみ出した。
新聞紙の山に混じって白っぽい人間が一人、転がり出たのだ。
(死体か!?)
ハッとして固まりかけ、慌てて片膝をついて覗き込む。
「おい!しっかりしろ!」
手を当てて呼吸を確かめ、生きてることはわかった。
金髪、白い肌、白いシャツ(汚れているが)に白いボトムス、なぜか裸足だ。
とても綺麗な顔立ちをしているが顔色は悪い。
多少生傷がある。
身動ぎもしない。
でも、脈と呼吸は正常だ。
周囲を見回したが、誰か関係者がいる様子はない。
(さてどうしようか。
…警察に連絡して…。いやいや。
大事にするより、とりあえず手当てだけしてやろう。
さっき蹴ってしまったしな)
そいつは、随分軽くて持ち運びが楽だった。
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