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ハートの海賊団
逃走者と追跡者
「まったく…うちのキャプテンはいつもいつも…」

グランドラインにある島に停泊中のハートの海賊団。
ログが貯まり、昼には出航すると言ったのは他の誰でもない、今ここで眠っている船長だったはずだ。

出航予定時刻を既に二時間過ぎていた。
船長が船内にいないことに気づいたペンギンは、準備を中断し探しに来ていたのだった。

陽のあたる絶好の昼寝スポットにいるであろうと予想はしていたが、まさか本当にいるとは思わなかった。


「キャプテン、起きてくれ。出航時間を過ぎてるぞ」


声をかけるも目を覚まさないキャプテンであるローにペンギンはため息をついた。

例えるならローは猫のような人間だ。勝手気ままに生きている、そんな船長になぜ皆が従い信頼を寄せているのかわからなくなるときがある。
約束は守らない、若干だが逃走癖もあるこの船長。
いつもいなくなったことに気づくのはペンギンで、見つけるのもペンギンだった。

だからか、最初は一緒に探していたクルーたちもペンギンに任せるようになっていた。
キャスケットがいつだったかペンギンに言った言葉が頭をよぎった。


《ペンギンって文句言いながらも、一番船長のこと見てるよな》


言われたときは、どうも思わなかった一言が、今になって気になり出した。
考えれば考えるほどわからなくなっていた。
こんなにも船長のことを考える理由がわからなかった。

いつまでたっても目を覚ますことのないローに、諦めたのか隣に座り木に凭れ掛かり
帽子を脱いで空を見上げた。


「眩しい…」


帽子を脱いでみたものの、太陽の眩しさに目を顰め帽子を被りなおそうとしたとき、誰かに帽子を取られた。
誰か、といってもここにいるのは自分と船長しかいないのだが…


「キャプテン、返してくれ」


「お前の顔、久しぶりに見た気がする」


にやりと笑いペンギンの帽子を指でまわし、自分の帽子を相手に被せた。
ペンギンは不満そうな表情を見せると被らされた帽子を脱ぎ、膝に置くと再度ため息をついた。


「起きてたなら返事してください」

「今起きたんだよ」

「嘘だな、人の気配に敏感なあんたに限ってありえない」


ペンギンがあっさり否定するとローは自分の顔を隠すようにペンギンの帽子を被り両手を伸ばし固まった体をほぐした。
ローの読めない行動に微かな苛立ちを感じながらペンギンは立ち上がった。


「キャプテン、早く行きますよ」


「いやだ」


「…あんたなぁ…予定時刻過ぎてるのわかってるのか?」


「そんなもの俺の気分しだいだろ」


「あんた1人のために出航を遅らせてるんだぞ、船長としての自覚を…」


「俺の船だ、俺がどうしようがいいだろ」


「いい加減にしろよ、ロー!」


口論の末、昔の癖かつい名前を呼んでしまったことに気づき、しまったと預かったローの帽子を強く握ると反対にローはどこかうれしそうに笑っていた。

「久しぶりに名前呼んだな」

「…とんだ失態だ。」


副船長としての自覚が足りないとでも嫌味を言われるかと身構えていたペンギンに、ローは被っていた彼の帽子を脱ぎ、いつも通りペンギンに被せた。

「ロー?」

「お前、俺のこと好きすぎるだろ」

「は?!」

「意識しすぎだっていってんだよ。いつもいつも熱視線送りやがって…」

ローの発言にペンギンは赤面し、いつもより帽子を深く被って隠そうと誤魔化し動揺しながらも疑問を相手に問いかけた。

「そ、そんなに俺見てるか?」

「ああ」

「…お前も、よくその熱視線に気づいてるな」

「……」

「ロー?」

「黙れヘタレペンギン」

ペンギンが持っていた自身の帽子を奪うと、ペンギンと同じように深く被った。
いつもいつも見つけるのはペンギンで、見つけやすい場所にいるのはローだった。

「ロー、顔赤いぞ」

「お前もな」




「あー!!キャプテンとペンギン見つけた!二人してなにしてんっすか?」

「出航時間すぎてるんだヨ?」

「探しに言ったペンまでサボってどうすんだよ」

いつものトリオがサボっている二人を見つけ駆け寄ってくると、いつものハートの海賊団になった。
たまにはこんな日常もありだろう。


「ペン、なんかにやけてるぞ」

「うっさい、バンわかっていってるだろ?」

「まぁな」

ハートの海賊団は、今日もにぎやかに航海を続けている…。


おわり



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あきゅろす。
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