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太陽と月

「あ〜、疲れた〜。」
「確かにな。」

 一護と冬獅郎は一旦、流魂街に帰る事になった。

「どうだった?」
「まあまあ。」
「だよな。」

 一護と冬獅郎は不躾に見てくる視線を無視してゆっくりとした速度で一護の二人の妹の元へ行こうとした。

「それにしても良いのか?」
「何がだ。」
「オレと妹が世話になって。」
「別に平気だ、寧ろ、お前の妹がばあちゃん家にいてくれた方が俺の方が助かる。」
「……。」
「少し前まで俺と、妹みたいな見た目が年上の奴がいて、そいつが院に行っているから、俺とばあちゃんだけだったんだが、俺まで出て行ったら、ばあちゃんは一人だ。」
「……。」
「ばあちゃん一人に残しているのは正直嫌だったんだ、だけど、お前の妹ならきっと言い奴だろ。」
「サンキュ。」

 一護は己の妹を褒められ、笑みを浮かべる。

「オレも正直妹が二人いるといえ、残していくのが物凄く不安だったんだ、だけど、おまえのばあちゃんなら、きっと預けられる。」
「そうか。」

 微かに笑みを浮かべる冬獅郎に一護の鼓動が跳ねたが、彼女はそれが何なのか分からず首を傾げる。

「どうかしたのか?」
「いや、気のせいだ。」
「……それならいいが。」

 冬獅郎はそう言いながらも、眉を寄せる。

「一兄っ!」
「お兄ちゃん。」

 二人の少女が一護の姿を見つけて駆け寄ってくる。
 一人は黒髪の少女。もう一人は茶色い髪の少女だった。

「遊子、夏梨。」
「……兄?」
「ああ、不自然だと思うよな、ちょっと待ってろ紹介してから教える。」
「分かった。」
「……一兄…そういつは。」
「…夏梨ちゃん……。」

 警戒する黒髪の少女とその横で茶色い髪の子が不安そうな顔をする。

「遊子、夏梨、こいつは日番谷冬獅郎、オレと同じように死神を養成する学校の試験を受けたもの同士だ。」
「……一兄。」
「心配するな、こいつは悪い奴じゃない、オレが保証する。」

 はっきりと言う一護に二人は顔を見合わせた。

「冬獅郎、こっちが双子の姉妹で、姉の方が茶色い髪の方で遊子、妹が黒髪の方で夏梨だ。」
「よろしく。」
「…………よろしく。」
「…………よろしくお願いします。」

 しぶしぶと言うように冬獅郎に挨拶をする二人に一護は何とも言えない顔をするが、冬獅郎離れているのか、肩を竦めた。

「んで、一護、どういう意味だ?」
「あっ、ああ、何で「兄」なのかか。」
「何処から、どう見てもお前は女なのにな。」
「……。」
「えっ。」
「なっ…。」

 冬獅郎の言葉に三人はそれぞれの反応を見せる。
 一護は軽く目を見張り、遊子はキョトンとした顔をして、夏梨は絶句していた。

「お前…すげぇな。」
「何処がだ?」
「オレを始めてみた奴は十中八九オレを男だと思うぞ。」
「まぁ、お前の言葉遣いや態度を見れば、そう思うかもしれないが、顔つきや体つきを見れば十分に分かるだろう。」

 当然と言うように言い切る冬獅郎に一護は苦笑する。

「残念ながら、多分今回支給される制服は男もんだろう。」
「……。」

 冬獅郎は何故分かっているのに、訂正しなかったんだ、と責めるような目付きで一護を見ていた。

「しゃーねーだろ。」
「どこがだ。」
「別にオレが女だろうが、男だろうが、死神になるには関係ない話だ。」
「……。」

 冬獅郎は確かに死神になるのに男も女も無いと思うのだが……。

「騙している事になるんじゃないか?」
「……まさか、最初に性別を聞かなかった向こう側の落ち度だろう。」
「……。」

 冬獅郎は確かに試験を受ける前も誰も性別など問うてはいなかった、勿論見れば直ぐに分かりそうなものだが…。

「もし、お前がその事で何か言われるんだったら、俺を呼べよ。」
「冬獅郎?」
「お前の力になるから。」
「サンキュウな、冬獅郎。」

 双子の姉妹は互いの顔を見合わせ、姉と冬獅郎を見ていた。

「夏梨ちゃん。」
「ああ、こりゃ、あいつを義兄と呼ぶ羽目になりそうだな……。」

 自分たちと同い年にしか見えない少年を「義兄」と呼ばなければならないと思い、夏梨は顔を引き攣らせた。

「まぁ、一姉は鈍感だから、ずっと先だろうな。」
「良かった〜。」

 少々姉に依存がある遊子は心からホッとしたように、胸を下ろした。

「時間はたっぷりあるだろうから、あたしらで見定めよう。」
「うん、夏梨ちゃん。」

 満面の笑みを浮かべる双子の姉に夏梨は肩を竦め、一番上の姉に話しかける。

「一姉、早く行こう、そろそろ日が暮れる。」
「あっ、悪いな。」

 罰が悪そうな顔を一護に冬獅郎は仏頂面で言った。

「それじゃ、案内する。」

 先頭を切って歩く冬獅郎の後を双子の姉妹、一護という順で歩いていった。

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あきゅろす。
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