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抗いし定め

 一護はどうしたものかと考えた、このまま進めば間違いなく織姫やたつきが傷つく。しかし、そうじゃなければ、織姫と彼女の兄との溝は出来たままだろう。

「まあ、何とかカバーすればいいか。」
「何を一人でぶつぶつ言っておるのだ。」
「ん?何でもねぇ。」

 公園のベンチに座り、一護は目の前で仁王立ちするルキアを見上げた。

「貴様は本当に何者だ?」
「んあ?」
「整の対応や虚退治、まるで、手馴れた様子だと思うのはわたしの思い違いか?」
「……。」

 一護はルキアの言葉に軽く目を見張った。

「あれ?黒崎さんと朽木さん?」

 聞きなれた声が聞こえ、一護がそちらを見るとビニール袋を下げた井上織姫がそこにいた。

「井上。」
「うむ、一護こやつは?」
「……クラスメイトの井上だ。」
「――っ!あら、こんにちはですわ〜、井上さん。」
「……。」
「こんにちは、朽木さん。」
「井上、どうしたんだ?」
「うん、お買い物だよ〜。」
「何を買われたのですか?」
「え〜と、バナナと羊羹と〜。」
「…悪い、井上、用事思い出した。」

 一護はそう言うと立ち上がる。因みにその顔はやや強張っていた。

「あっ、ごめんね、引き止めちゃって。」
「いや。」
「んじゃ、行くぜ朽木さん。」
「ごめんあそばせ〜。」
「……。」

 一護はルキアの猫かぶりキャラにうんざりしながらその場から立ち去った。

「で、何なんだ、一護。」

 だいぶ織姫から離れ、ルキアはいつもの生意気そうな表情に戻った。

「別に、ただ、今夜虚が出るだろうから、さっさと帰ろうかと思っただけだ。」
「……。」

 一護の言葉にルキアは怪訝な顔をする。

「何でそんな事が分かるのだ?」
「井上を見て何も感じなかったか?」

 一護は始めの頃は全く気づかなかったが、今は井上の近くに虚になってしまった井上の兄の気配を感じたのだ。

「別段何も。」
「そうか……。」
「貴様は何か感じたのか?」
「…まあな。」
「……。」

 一護の言葉にルキアは黙り込む。

「井上さ、兄貴を亡くしているんだ。」
「うむ…。」
「その人…昊さんの気配というのかな…それが、変化している。」
「貴様、何でそんな事が分かるんだ。」

 死神の力を失ってしまう前の自分でもそんな事は気づかないだろう、とルキアは分かっていたので、そんな事を言う。

「さあな、分かるんだから、分かる。」
「……。」

 まるで空気を読み、天気などが分かるかのように、一護はそう言った。

「ルキア、気をつけろよ。」
「うむ、貴様こそ心して掛かれ。」
「大丈夫だよ、オレは。」

 一護はそう言うと、悲しそうに微笑んだ。

「心配なのは井上だな。」
「それほどまでに切羽詰っている状態ならば、すぐにでも動かなくても良いのか?」

 ここまで分かっている一護が動かない事にルキアは疑問に思うが、一護は苦笑を浮かべるだけで何も言わない。

「動きたくても、動けない。」
「……。」

 ルキアは一護の言う意味が分からず、首を傾げた。

「きっと今倒したら、間違いなく井上たちに溝が出来たままだからな。」
「…貴様は変わっているな。」
「そうかもな。」

 ルキアの言葉に一護は懐かしそうに目を細める。

「一護?」
「そういえば、遊子に醤油とか頼まれてたよな。」
「そうだったな。」
「それじゃ、近くのスーパーに寄って帰るか。」

 一護は近くにあるスーパーに入り、携帯のメモに書かれた商品を手にとっていく、その時、ルキアが白玉餡蜜を強請り、結局それも買わされたのだった。
 そうこうしている内に、夜が更けた……。

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あきゅろす。
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