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抗いし定め

「一護っ!」
「ウザイ。」

 突進してきたクラスメイトに一護は容赦なく殴り飛ばす。

「ひ、酷い。」
「……。」

 一護は冷めた目で啓吾を睨んでいると、友人の一人が近寄ってきた。

「おはよう一護、大丈夫?」
「ああ、はよ、水色。」
「何か家にトラックが突っ込んだらしいね。」
「ああ、その後始末で時間食った。」
「何だ、あんた無事だったの?」

 快活そうな声に振り返ると、そこには幼馴染のたつきがいた。

「たつき…。」
「有沢さん、心配してたんだよ。」

 彼女らしい言葉に一護が苦笑すると、水色がすかさず一護に耳打ちした。

「心配掛けて悪かったな、たつき。」
「あ、あたしは別に……。」

 不機嫌そうな顔をするたつきに一護は不思議そうな顔をするが、不意に彼女の目に映った存在を見て溜息を吐く。

「あいつ……。」
「あ〜ら、黒崎さんご機嫌麗しゅう〜。」

 猫かぶりをしているルキアに一護は溜息を吐いた。

「悪い、ちょっと出てく。」
「あっ、うん。分かった。」

 一護はにっこりと微笑み、ルキアを屋上に連れて行く。

「お前な…、もっと自然にしてろよ。」
「何を、これが普通なのだろう。」
「……。」

 一護はルキアが愛読していた本を思い出し、げんなりした。

「ルキア、もっとまともな本を貸そうか?」
「うむ、そこまで言うんなら読んでやってもいいぞ。」
「……。」

 何処までも上から目線のルキアに一護は溜息を吐きたくなるが、何とか堪えた。

「で、何のつもりだ?」
「分かっているのだろう?」
「…虚退治の手伝いか?」

 一護の答えにルキアはニンマリと人の悪い笑みを浮かべた。

【相棒、こいつ殺ってもいいか?】
(駄目に決まっているだろう。)

 一護は内にいる破月に対し、顔を顰めるが、ルキアはそれを虚退治が嫌だと思ってか、表情を暗くさせる。

「嫌なのか……。」
「あっ、てめぇの所為じゃねぇよ、ルキア。」
「本当にか?」
「別に虚退治くらいなら大丈夫だ、それに少しでも勘や何やらを取り戻さないとな……。」
「うむ?何か言ったか?」

 最後の方が聞き取れなかったルキアは一護に訊ねるが、一護は何でもないというように首を横に振った。

「いや、何でも――。」

 急に言葉を止める一護にルキアは怪訝な表情を浮かべ、じっと一護を見た。

「一護?」

 あまりにも真剣な顔でルキアは躊躇しながら一護の名を呼び終わった瞬間に、伝令神機が鳴った。

「むっ、一護。」
「大丈夫だ、オレが行かなくても滅却師が動いた。」
「なっ、何故貴様が滅却師の存在を知っておるっ!」
「企業秘密。」
「……。」

 黙りこむルキアに一護は頭を掻いた。

「まあ、その内ばれるから構わないよな。」
「何の事だ?」

 胡乱な目つきで一護を睨むルキアに一護は苦笑を浮かべる。

「滅却師何だが、同じクラスの奴なんだ。」
「何っ!」
「石田雨竜、学年のトップクラスの成績で模範的な優等生って感じの奴だな。」
「その石田という奴はこちらが死神だと知っているのか?」
「ああ、そうだろうな、オレの霊絡が紅くなっているだろうからな。」

 一護はそう言うと目を瞑り、霊絡を探り出した。
 数多ある霊絡に一護は己の霊絡が確かに紅くなっている事に気づき、本当に自分は死神に戻ったのだと実感した。

「一護。」
「何だ?」

 ルキアの声に現実に引き戻された一護は彼女をじっと見た。

「貴様はわたしたちの味方なのか?」
「ルキア。」
「すまぬ、忘れてくれ。」

 一護は自分がこれから何が起こり、そして、どんな事が自分たちの身に降り注ぐのか知っている。
 それは未来を知らないルキアにはきっと不自然に見えるだろう。
 そして、彼女が不安になるのは当然の事だと思い、そっとルキアの手を掴んだ。

「オレはお前の…いや、お前たち死神を信じている。」
「えっ。」
「お前らがオレを味方と思う限り、オレはお前たちと共にいる。だけど、もし…オレの大切な人に刃を向けたなら…その時はいくらルキアお前であろうと、許さない。」
「……。」

 ルキアは一護のこの言葉が忠告なんて生易しいものじゃない事を肌で感じていた。

「貴様は…。」
「オレを信じなくていい。だけど、敵ではないんだ。決して。」

 遠くを見る一護にルキアは何も言えなかった。

「さて、さっさと教室に戻るとするか。」
「一護。」
「ん?」

 一護を呼び止めたルキアは意を決したような顔をして、そして、その重い口を開いた。

「わたしは貴様を信じる。だから、もし話せるのなら、何でも話してくれ。」
「……。」

 一護の目が軽く見張り、すぐに彼女は口元を緩めた。

「サンキュー、ルキア。」

 ルキアはいつの彼女であっても彼女なのだと知る事が出来て一護は胸の内が温かくなった。

「いつか、話せるようになったら、話すから。」

 話すか話さないかは本当は分からなかったが、それでも、ルキアと冬獅郎には自分の事を話したいと思った。

「ああ、期待しているぞ。」

 一護の横に並んでルキアはニヤリと笑った。

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