抗いし定め
7
十番隊から逃げ出すように飛び出した一護は今度こそルキアのいる場所に向かった。
「………。」
一護はルキアを助けなくてはならないと考えつつも、どうしても、先ほど見た銀色の髪と翡翠の瞳の彼の事を考えてしまっている。
会いたかった。
でも、会いたくはなかった。
会えば間違いなく自分が傷つく事に気づいていた。
だって、ここにいる冬獅郎は一護の知らない冬獅郎、愛している彼と同じ魂だが、それでも、彼女が知っている彼とは少し違う道を歩む人なのだ。
「変わってなかったな…。」
幼い容姿とは相反した大人のような瞳。
一見冷たそうに見える表情から滲み出す、優しい心。
全てが変わりないが、ただ一つ違うとすれば彼は一護を知らない、彼女を愛していないのだ。
「冬…獅郎…。」
一護の瞳から涙がこぼれる。
彼女が思っているよりもずっと冬獅郎が覚えていない事に衝撃を受けていた。
「何で…何で……。」
あのぬくもりに触れたい。
あの声に己の名前を読んでほしい。
あの腕に抱かれたい。
あの瞳に自分を映してほしい。
「何で…覚えていないんだよ……。」
思っていたよりも自分は脆いのだと一護は気づかされた。
冬獅郎に会いたかった。
冬獅郎に会いたくなかった。
矛盾した気持ちを抱きながら彼女は進むしかなかった。
それが、たとえ茨の道だろうが何だろうが、彼女は進むしか道はなかった。
「うぎゃっ!」
「つ、強い…。」
「べぎゃっ!」
「……。」
無意識に死神たちを倒している事に深く考え事をしていた彼女が気づく事はなかった。そして、それはルキアの捕えられている場所にたどり着くまで続いていたそうな……。
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