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抗いし定め

 一護は見覚えのある天井を見て目を見開いた。

「あっ、起きた?」
「えっ!」

 一護は驚いて体を起こすとそこには乱菊と冬獅郎がいた。

「……。」

 夢を見ているのかと一護は混乱した頭でそんな事を考える。

「あんた、大丈夫?」
「えっ…はい。」
「そう?でも、顔色悪いわよ。」
「大丈夫です。」
「……。」

 一護の身を案じる一護に乱菊は眉を寄せる。

「お前…旅禍か?」
「……。」
「隊長っ!」

 冬獅郎の言葉に一護は相変わらず鋭いな、と感心しながら微笑み、乱菊は行き成り何を言い出すのかと冬獅郎を睨んだ。

「……お前だって気づいているんだろうが。」
「…ぐっ…。」

 冬獅郎の冷たい目が乱菊を射抜き、彼女は黙り込む。

「当たり、流石、冬獅郎だな。」

 二人のやり取りを見ていた一護はクスクスと笑う。

「………あんた、何で隊長の名前を知っているの?」
「あっ…。」

 一護は乱菊の言葉で自分の失態に気づく。
 もう出てしまった言葉はもう戻らない、一護はどうやって言い訳をするか考えるが、すぐにその考えを放棄する。
 一護は冬獅郎のあの冷たくて、だけど、強い瞳に嘘を言いたくなかったのだ。

「知っているよ、日番谷冬獅郎、天才児で十番隊の隊長。」
「……。」

 一護は胸の内でこっそりとこう付け足す。「そして、オレの最愛の人」とーー。

「世話になったけど、まだ捕まる訳にはいかないからな。」

 一護は動こうとするが、体中が悲鳴を上げる。

「ぐっ…。」

 一護は痛みで顔を顰めていると、乱菊が心配そうに彼女に駆け寄る。

「無理をしない方がいいわよ。」
「……。」

 一護は何で自分の体がこんなにも痛むのか考え、そして、思い出す。

「剣八の野郎か…。」
「更木がどうした?」
「あんた、まさか。」

 行き成り戦闘狂の名前が挙がり、聡い二人は何か勘づく。

「……あいつに死合を申し込まれた。」
「……。」
「……。」

 二人は一護を憐れんだような目で見つめる。

「……お前、更木を相手によくその怪我で済んだな。」

 冬獅郎の言葉に乱菊は今さらながらにその事に気づく。

「本当ね。あんた強いの?」
「まあ、強いんじゃないかな?」

 一護は苦笑を浮かべながらそう言った。

「さて、本当にやばいから行くかな。」
「…あっ、あんた待ちなさい。」
「ん?」

 一護は二人が自分を捕えるのならば、たとえ傷つけても逃げ切るつもりでいた。

「名前、教えなさいよ。」

 意外な事を言われ、一護は目を丸くさせる。

「オレを捕えるんじゃねぇのか。」
「不幸か、幸いか、旅禍を捕まえる命令は出ていないからな。」
「……。」
「そーいう事。」

 ニンマリと笑う乱菊に一護は苦笑を浮かべる。

「黒崎一護。」
「ふーん、イチゴね、可愛らしい名前ね。」
「可愛くなんかない、一つを護るで一護だ。」

 一護は不機嫌そうな表情でそう言った。そして、振り返らずにそのまま外に飛び出した。

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