抗いし定め
2
「そんじゃ、皆さんいいすっか?」
「ああ。」
「大丈夫でーす。」
「ム。」
「ふん。」
「無論じゃ、早くせんか。」
喜助はテッサイに頷き、そして、穿界門が開かれる。
「それじゃ皆さんお気をつけて。」
「行くぞ。」
一護は先頭を切って穿界門を抜ける。
走りながら一護は周囲を警戒する。
前は断界を抜ける時に拘突と出会い、時間軸が狂ったそうだ。あの時はそんな事に気づきはしなかったが、何度も穿界門を使っている一護はそれを後々知る事が出来た。
そして、きっと今回も拘突と出会う事になるだろう、その時に井上、チャド、石田にはあまり負担をかけたくなかった。
「黒崎…君、大丈夫?」
男装をしている一護を気遣ってか、井上がそう呼び、一護はハッとなる。
「ああ、大丈夫だ。」
「……。」
眉を下げる井上に一護はぼんやりしすぎたな、とこっそり溜息を吐く。
刹那、一護は顔を顰めた。
「皆先に行けっ!」
一護は急に立ち止まり、背後を睨んだ。
「一護?」
「足を止めるなっ!」
足が止まりそうになる面々に一護は怒鳴りつける。
「いいから、てめぇらは走れっ!」
「……お主。」
夜一は一護が立ち止った理由を察して、彼女の肩に飛び乗った。
「何をする気じゃ。」
「こうするんだよっ!」
一護は夜一が肩に乗っている事をすっかり忘れ顔に手をやる。
そして、一護は仮面を被り、月牙を放つ。
夜一は一護の仮面と月牙の威力に思わず目を見張るが、肝心の一護はその事に気づいていなかった。
一護の放った月牙は見事に拘突にぶつかり、爆風を生み出した。
一護は悠然と立つが他の面々はその風圧に耐える事が出来なかった。
「うわっ!」
「きゃっ!」
「……ム。」
三人分の声が聞こえ、一護は苦笑を浮かべた。
「うーん、加減が難しいな。」
これから先黒幕以外に手加減が出来るのか本気で大丈夫か、と一護は心配になるが、、まっ、何とかなるだろうと、楽観的に考える。
一護は斬月を背負い直し、走り出そうと方向を変えると、そこには誰もいなかった。
「ありゃ?」
「…馬鹿者が。」
素っ頓狂な声を出す一護に夜一は呆れた声を出す。
「あー…オレ、やっちまった?」
一護は自分がやらかしてしまった事実に溜息を零す。
「面倒だな…。」
一護は頭を掻いてすぐに走り出す。
運だけはいい面々に一護は別段心配はしていなかった、だから、彼女はそのまま尸魂界に向かうため瞬歩を使った。
尸魂界にたどり着いた一護は茫然とする。
「何で…瀞霊廷にいるんだよ。」
初めて飛ばされた時は完全に流魂街だったのに、今回彼女がたどり着いたのはどこをどう見ても瀞霊廷だった。
「一護。」
「ん?」
「お主何者だ?」
「……。」
一護は夜一の問いに苦笑を浮かべる。
「オレはオレ、黒崎一護で、死神代行だ。」
「……わしが言いたいのは。」
「分かっている、そんな事じゃねぇんだろう。」
「……分かっておるのか。」
不満そうな声に思わず一護は笑いそうになる。
「色々と襤褸出してんもんな。」
一護は今までの自分の行動を思い出し、ばれても可笑しくない事に気づいていた。
「一護、お主何を考えている?」
「……オレはただ護りたいんだ。」
「……。」
「絶対に今度は失わない。」
一護の目はいつもよりも真剣で夜一は目を丸くさせた。
「お主、一体…。」
「さて、どうすっかな?」
一護は苦手だけど仲間の霊圧を探った。
どうやら仲間はそれぞれ瀞霊廷の色々な場所に飛ばされており、井上と石田は比較的近い場所におり、一護はかなりすっ飛ばしているが、あの時と同じなのかと考えた。
「さーて、鬼が出るか蛇が出るか。」
口角を上げて一護は笑い、真っ直ぐにルキアのいる場所に足を向ける。
「大丈夫、今度は仕留める。」
あの時にはなかった力が今彼女にはある。
再びあの惨劇が起こらないように一護は奔走する。
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