抗いし定め
2
とある日の夜ルキアが出て行くのを死神姿の一護は自分の家の屋根から見守っていた。
この後ルキアは恋次と白哉と会う。
一護は自分のやるべき事を考える。
今回の戦いでは絶対に自分は勝ってはいけない、かといって、無様に白哉の攻撃を受けて死神の力を失うのだけは避けたい。
「やっぱり、恋次に負ける方がマシか。」
一護は溜息を漏らし、自分が恋次負ければ白哉は多分それ以上無駄な事をしないだろう、だから恋次に負けるのが一番いいはずなのだが、一護は自信がなかった。
一護が前に生きていた時代の恋次とならば結構いい勝負をして一護が勝つのだが、今の恋次は多分今の一護なら楽勝な相手だ。
つまりは下手にいつもの癖で戦えば勝ってしまう、しかも、下手な演技で負けをしてしまったらそれはそれで疑われる。
さじ加減の難しさに一護は顔を顰める。
「あーっ!うだうだ考えても埒があかねぇっ!」
一護は髪を掻き乱し、ある方角を睨む。
「絶対に負けるんじゃねぇぞ恋次っ!」
もし、恋次が負ければ尸魂界であった時にメタ斬りにしれやると一護は物騒な事を考えていた。
「そろそろ行くか。」
自宅の屋根を蹴り、一護はルキアの元へと急ぐ。
丁度一護がついた時には恋次がルキアに詰問している時だった。
一護は自分の姿を今一度確かめ、そして納得したのか小さく頷いた。
今彼女の格好はいつもと変わらぬ死覇装なのだが、いつもと違いさらしをきつく巻いているので、胸が目立たなくなり短い髪の所為か男のようにも見える。
前の自分は男と偽っていた、だけど、ひょんな事からばれてしまうが、それでも、それはそれで今はよかったように思う。
だからと言ってまた皆を騙すのは気が引けるのだが、ばっさりと切られた髪はとても女としては通じないと思った一護は男として貫き通す事にした。
「そいつを放せよ、赤パイン。」
一護の声によって二人は勢いよく振り返る。
「誰だっ!」
「一護っ!」
二人の声に一護は笑みを漏らす。
「おい、赤パイン、ルキアを離せ。」
「…お前か…ルキアから力を奪ったのはっ!」
「……そうだと言ったら?」
一護が挑発して見せると恋次は斬魄刀を抜いた。
「咆えろ、蛇尾丸っ!」
恋次の攻撃に一護は軽々と避ける。
「この野郎。」
頭に血が上っているのか恋次の攻撃はあまりにも単調で一護は呆れながらどうするか決める。
ぼんやりとしている一護に恋次は好機だと思ったのか突っ込んでくる。
「一護っ!」
ルキアの叫びを頭の隅で聞きながら一護は無意識に斬月で蛇尾丸を受け止め、そして、白打で彼の腹を殴った。
「あっ…。」
呆気なくぶっ飛んででいく恋次に一護は顔を引きつらせる。
やってしまった。
そう頭の中で思うが起こってしまった事態はもう変えられない。
一護は白哉に向き合う。
「あいつはもう使えないぜ?」
「……兄は何者だ。」
「死神代行。」
白哉の質問に一護は答える。
そして、白哉の刀が一護に襲い掛かる、一護は斬月でそれを防ぐ。
一護は白哉の攻撃を見切り、そして、彼の刀を飛ばす。
「……やっちまった。」
一護は誰にも分からないほどだが肩を落とした。
「どうする?これでもルキアを連れて行くか?」
一護は己の動揺が悟られないように冷ややかに白哉を見る。
「…散れ…。」
「――っ!」
行き成り現れた桜の花びらに一護は思わず、顔を隠す。
そして、その一瞬の隙をつき、白哉は穿界門を開く。
「ルキアっ!」
一護が顔を上げた瞬間、穿界門が閉まった。
「……………あ〜、うまくいった。」
拍子抜けするほど簡単にうまくいき、自分が今まで気をもんでいたのが馬鹿らしくなったが、すぐに次の段階に進まないといけないと思い、ある場所に向かう。
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