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抗いし定め

 一護は誰もいない空き地に立ち、そして、霊圧を少し上げた。
 すると無数の黒い影が一護めがけてやってくる。
 彼女は斬月を構えた。

「行くぜ、おっさん。」

 呼び押せた大方の虚は一護の元に向かっている。それが彼女の狙いだった。
 いくつかの零れ弾が井上、チャドの能力開花を促せばいい、そして、空座町を護るために一護は己の全ての力をかけるだけだった。

「行くぜ、相棒。」

 一護はそう言って斬月を少し引き、霊圧を込める。

「月牙…天衝っ!」

 最大の技によって虚は三分の二くらいの数まで減り、そして、いくつかは一護の間合いに入り込んだ。

「しつけーなっ!」

 一護は斬月を振り回し、そして、虚を薙いでいく。
 しかし、一護は気づいていなかった敵が彼女の背後に居てその鋭い爪を彼女に下ろそうとしているのを。

「――っ!」

 一護は反射的に殺気を感じ、身をよじり、ギリギリのところでその攻撃を回避できたようだが、残念ながら彼女の長い髪が犠牲となってしまった。
 はらはらと散る橙色の髪に一護の目は大きく見開かれた。

「あっ…。」

 前の自分の時に言われていた言葉を思い出す。

『お前の髪は綺麗だな……。』

 そう言って髪を掬い上げ、そっと一房の髪に口付けを落としてくれた人。

『切ってしまうのか?』

 一度あまりの夏の暑さに一護が髪を切ろうかと呟いたら、彼は残念そうに言った。だから、その時から切りたくないと思ったのだ。
 なのに、その大事な髪は地面に散った。

「………ぇら。」

 一護は俯き、霊圧を上げる。

「てめぇらっ!絶対に許さねぇっ!」

 激怒した一護は斬月に霊圧を込め、月牙天衝を打った。

「さあ、誰から地獄に行く?」

 一護は妖艶に微笑む。
 虚にもし感情や危機感がもっとあれば間違いなく逃げ出していたのだろうが、残念ながら彼らは光に集まる蛾のように一護の大きくなった霊圧に惹かれたのだった。
 一護は卍解をしそうな勢いで斬月を振り回す。
 まるで鬼神のような一護だったが、数分もしない内に虚を全て殲滅させてしまった。

「……ふんっ!」

 一護は塵となって消える虚を一瞥しながら鼻を鳴らす。

「乙女の怒り思い知ったか。」

 一護の中の怒りはそう簡単に落ち着く事はなかったが、それでも次に自分がなさなければならない事を考え、地面を蹴った。

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