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抗いし定め

 妹たちと合流した一護はグランドフィッシャーの気配を感じ、顔を強張らせた。

「一姉、どうしたんだ?」
「お姉ちゃん?」
「……遊子、夏梨…親父のところに行け。」
「えっ?」
「いいから、早くっ!」

 叫ぶ一護に双子は怪訝な顔をするが、二人は手を繋いで父親の元に向かった。
 一護は完全に二人がいなくなったのを霊圧で感じ取りながら、持ってきた義魂丸を口に入れた。

「何すんだよっ!」

 文句を言うコンを睨み、一護は背負っていた斬月に手を伸ばす。

「おい、コン、どっかいっとけ。」
「へ?」
「いいから、安全な所に行け。」
「わ、分かった。」

 一護の気迫に飲まれたコンは大人しくこの場から立ち去り、そして、空から冷たい雫が降り始めた。

「…………グランドフィッシャー。」

 仇を目で捉えた一護はゆっくりと斬月を振り下ろした。

『………何処かであったか?小娘…。』
「……。」

 一護はやはりこいつは自分を忘れているのかと思い、唇を噛んだ。

「あんたが食い損ねた人間だよっ!」

 一護は瞬歩で回りこみ、グランドフィッシャーを狙うが、そいつは毛を伸ばし、一護の斬撃を受け止めた。

「くっ!」
『愚かな小娘だ。』

 グランドフィッシャーの爪が一護をかする。

「危ないな…。」

 一護は前の時の苦い思い出を思い出し、顔を歪める。
 あの時、母の姿を出され、躊躇した隙に逃げられたのだ。

「だけど…あん時とは違う。」

 一護は斬月を構えなおし、グランドフィッシャーを睨む。

「一護っ!」

 一護の上がり続ける霊圧を感じたのか、ルキアがこちらの方に駆け寄ってきて、そして、一護の意識がそちらに向けられた瞬間、グランドフィッシャーは一護をその爪で貫いた。

「一護っ!」
「しまった。」

 一護は青い顔をして、グランドフィッシャーを見た。
 疑似餌の姿が、彼女の良く知る姿に変わり、一護は怒りを覚えた。

「えっ…何故…。」

 ルキアは疑似餌の姿を見て驚くが、すぐに一護の異常ともいえる霊圧に唖然とする。

「お前は…卑怯な奴だな?」
『何?』

 一護の顔は般若の如く怒り狂っていた。
 疑似餌が真似た姿は前回の母の姿ではなかった。
 銀色の髪、翡翠色の瞳。
 疑似餌は十番隊隊長、日番谷冬獅郎の姿を真似ていたのだ。

「確かにオレは、こいつは斬れない。」
『ならば…。』
「だけど、それは本物であって、こんな偽者じゃねぇっ!」

 一護は霊圧を上げ、そして、斬月を前にかざす。

「卍っ解っ!」

 砂塵が一護を中心にして渦を巻く。

「天鎖斬月……。」

 漆黒のコートに身を包んだ一護は冷たい怒りを宿した目でグランドフィッシャーを睨んだ。

『……っ!』
「逃げるんじゃねぇぞ。」

 後ろに下がったグランドフィッシャーに一護は冷たい声を出した。

「お前はオレの大切なものを踏みにじった。だから…許さなねぇ……月牙天衝っ!」

 一護は天鎖斬月を振り下ろし、そこから漆黒の刃が真っ直ぐグランドフィッシャーを襲った。

『――っ!』

 何も出来ず、グランドフィッシャーは塵となって消えた。

「……。」
「一護……、貴様…。」

 一護は全てが終わったというのに、どこか悲しげな顔をした。

「本当に…嫌な敵だった。」
「……。」

 一護は己の手を見た。
 いくら偽者とはいえ、愛するものを斬るのは嬉しくない事だった。

「…一ついいか?」
「……。」

 戸惑いながらも質問してくるルキアに一護は視線だけ彼女に向けた。

「貴様は日番谷隊長を知っているのか?」
「……。」

 一護は無言で返した。
 ルキアは彼女が話したくないのだと悟り、肩を竦める。

「……それにしても、貴様は一体何者だ。」

 軽い調子でいうルキアに一護は軽く目を見張った。

「サンキュー、ルキア。」
「……わたしは質問をしているんだぞ?」
「オレは死神代行だ。」
「そうか。」

 一護はいつの間にか雨がやんでいる事に気づき、空を見上げる。
 まだ始まったばかりで、何も終わっていない、一護は前に進むためにまた一歩踏み出した。

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