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抗いし定め

 母の命日の日がとうとう来てしまった。
 一護はあの時と同じように坂を上っていると、案の定そこにはニッコリと微笑むルキアの姿があった。

「あれ?」

 勘のいい夏梨がルキアの存在に気づき、一護は深々と溜息を吐いた。

「悪い、遊子、夏梨、中学の時の奴だから、ちょっと挨拶してくるな。」
「うん、いってらっしゃい。」
「一姉、あの人って…。」

 夏梨は何かを感じたのかそう言い、一護は誤魔化すように笑った。

「ちょっとな。」
「……まあ、いいけど、変なのいっぱい背負わないでよね。」
「努力はしているさ。」
「……本当に一姉は苦労性だね。」

 溜息を吐く夏梨に一護は苦笑する。

「悪いな、苦労かけて。」
「苦労しているのはあたしじゃなくて、一姉だけだよ。」
「そうか?」
「そう、まあ、いいけどさっさと行って戻ってきてよね。」
「ああ、努力はする。」

 一護はそう言い残すと、ルキアの元に走っていった。

「おい、何でこんな所にいるんだよ。」
「貴様が学校を休むから心配でな。」
「……。」

 満面の笑みを浮かべるルキアに一護は思わず溜息を吐いた。

「お前な…墓参りについてきて何が楽しいんだ?」
「えっ?」
「………たつきから聞いてなかったのか?」

 驚いているルキアに一護は思わず、昨日学校でたつきに何処かに行くのか聞いたと思ったのだが、残念ながら彼女は聞いていなかったようだ。

「……はぁ、母親の命日なんだ、今日は……。」
「すまぬ…。」
「いいさ、いつかちゃんと話すけど、オレの母親は虚によって殺されたんだ。」
「――っ!」

 一護の何気ない言葉にルキアは瞠目する。

「グランドフィッシャー、と言って、そいつは霊力の高い人間を疑似餌でおびき寄せて、食らってきた奴だ。」
「一護?」

 顔を強張らせる一護にルキアは心配になる。

「あいつはお袋の仇だ…。」
「……。」
「もし、あいつが現れたら……頼みがある。」

 あまりにも真剣な目つきにルキアは怯みそうになった。

「オレ一人で戦わせてくれ。」
「何っ!」
「……あいつはオレの手で今度こそ倒したいんだ。」
「……。」

 ルキアは一護の「今度こそ」という言葉が少し引っかかったが、それよりも、彼女が口にした願いの方が驚いた。

「無理だ。」
「大丈夫だ…。」
「だが…………………分かった。」

 ルキアは一護の真剣さに負けた。

「ありがとう。」

 ホッとしたような表情を浮かべた一護はそっとルキアの頭を撫でる。

「無茶はするのではないぞ。」
「了解。」

 ルキアの言葉に一護は真剣に頷き、今度こそはあいつを倒す事を心に刻んだ。

「悪いけど、オレは行くな。」
「ああ、そうだ、こいつを忘れていた。」

 ルキアは背負っていたリュックを下ろし、リュックからコンを取り出した。

「……姐さん、酷い…。」

 よっぽどリュックの中が狭かったのか、コンはぐったりとしていた。

「……。」

 一護は頭を掻き、意を決したように、コンを見る。

「悪い、コン。」
「えっ?ふぎゅっ!」

 一護はぬいぐるみの口に手を突っ込み、そして、義魂丸を取り出した。

「これは持っていくな。」
「ああ。」

 ルキアは乱雑にぬいぐるみをリュックに突っ込んだ。
 一護は妹たちのいる方に足を向ける。

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あきゅろす。
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