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抗いし定め

 一護はルキアがいない事から、あいつが来るのを悟った。
 時期的に言えば、間違いなのだが、あいつが起こす騒ぎは正直、鳥肌が立つ。

「何で、女のオレが女を狙わねぇといけないんだよ。」

 そう、今日は間違いなく改造魂魄の「コン」が来る日だ。
 最初はまあ、こんなものか、とか思っていたが、あいつが起こす騒ぎによって、何日間か、変態を見るような目で見られ、かなり嫌だった。

「……オレ一人で虚退治に行くとして、ルキアにあいつを見張らせて……。」

 ぶつぶつと呟く一護は後ろから来る人物に気づいていなかった。

「一護っ!」
「のあっ!」

 背中がズキズキと痛み、一護はルキアが自分の背を殴った事を知る。

「ルキア。」

 恨みがましく見る一護にルキアは爽やかな笑みを浮かべた。

「丁度いいものを仕入れた、見てみろ。」

 アヒルのキャンディケースを見せられ、一護は顔を引きつらせる。

「……これは?」
「これはだな、ソール・キャンディと言って、義骸から抜け出る時に使うものだ。」
「……で?」
「貴様の体をいつまでもそこら辺に放置すれば、問題が多いだろう、だから、わたしがこうやって貴様を気遣っているのだ。」
「……。」

 ルキアは親切からこれを与えているのは一護だって理解している、一護が葛藤していると、ルキアの伝令神機が鳴った。

「虚か。」
「はぁ、ルキアそれを貸せ。」

 一護はそう言うと、義魂丸を取り出した。
 緑色の飴のようなそれを飲み込み、一護は死神化する。

「ルキア、オレは行くけど、くれぐれも、こいつが変な事をしないように頼むな。」
「…いや、わたしも。」
「大丈夫だ、そんなに強い奴じゃない、十五分以内には戻るから、もし、十五分過ぎても戻らなかったら探しに来てくれ。」
「うむ…。」
「それじゃ……。」

 一護は自分の体を引き寄せ、コンを睨む。

「もし、勝手な事をすれば…酷い目に合わすぞ…。」

 殺気を振りまく一護にコンは頷いた。

「それじゃ、また後でな。」

 一護は早く事を終わらせる為に瞬歩を使った。
 二箇所に現れた虚はそれほど強いものではなくそれぞれ一撃で終わり、帰り道にコンの体になる人形を見つけ、それを拾った。
 ルキアをつけていたのがよかったのか、コンは一護の体でナンパをしなかった。

「ただいま。」
「おお、黒崎さん、ちょっと来てくださいな。」

 一護が戻ってきたのを知ったルキアはコンの入った一護の腕を掴み、屋上に向かった。

「早かったな。」
「ああ。」
「……。」

 一人いい顔をしないコンを見ながら、一護は腰を下ろす。

「おい、そこの改造魂魄。」
「――っ!」

 一護の言葉にコンは凍りつき、そして、逃げようとするが、一護にその組み敷かれる。

「ぐっ……。」
「大人しくしてろよ、つーか、オレはてめぇを浦原さんとこに引き渡す気はない。」
「えっ?」
「…まあ、あの義魂丸より、お前の方が女好きで、スケベという点を除けば百倍もマシだしな。」

 一護はルキアのチャッピーや他の現世に来た死神の義魂丸を思い出し、溜息を吐く。

「ルキア。」
「………貴様、何故こいつが改造魂魄だと…いや、それ以前に何故改造魂魄の存在を……。」

 目を丸くさせているルキアに一護は笑みを浮かべる。

「ちょっとな。」
「……。」

 怪しむルキアに一護は肩を竦める。

「まだ、お前たちに話す時期じゃない。」
「……。」

 ルキアは直感的に一護のお前たちが自分とコンだけを指した言葉じゃない事を悟った。

「さてと、来たか。」

 一護は急に立ち上がり、そして、一点を睨む。

「出てきたらどうだ?下駄帽子。」
「ほお、気づいていたんっスか?」
「当然だろう?」

 姿を現したのは浦原喜助だった。

「あなたは一体何者なんでしょうね?」
「黒崎一心の娘としか言えねぇな。」
「……。」

 クスリと笑う一護に喜助は険しい顔をした。

「あなたは…どこまでこっちの事を知っているんすか?」
「さあな。」

 一護は笑みを浮かべるが、その目は決して笑ってはいなかった。

「あんたの手違いで来た、この改造魂魄はオレが責任を持ってもらう、だから、こいつを処分するという考えは捨ててくれ。」
「……まあ、そこまで言うのなら、その改造魂魄は諦めますけど、あなたは何を考えているんすか?」
「一番良い道にたどり着けるように考えているだけだ。」
「……。」

 真っ直ぐに喜助を睨む一護は急に目を離した。

「あんたは、あんたの考える通りに動けばいいさ、だけど、オレはあんたの手のひらの上で黙って踊らされるなんてごめんだ。」
「……。」
「あんたの不利益のなる事は決してないとは言わないが、それでも、オレの行動を邪魔するのだけはあんたの身のためだぜ?」
「……死神になって間なしの貴女に何ができるんっすか?」
「出来るさ。」

 一護は霊圧をほんの少しだけ上げる。

「………凄い霊圧ですね、ですが、これだけじゃこの先死にますよ?」

 喜助の忠告に一護は思わず笑ってしまった。

「これがオレの精一杯だと思っているのか?」
「……違うのですか?」
「ああ、これはオレの霊力の一割の力を出しただけだ。」
「――っ!」
「常に霊圧が垂れ流し状態だが、これでも、精一杯抑えてもこれ以上抑える事が出来ないんだ。」
「……貴女は本当に何者ですか?」
「死神代行、黒崎一護。」

 喜助の言葉に一護は即座に答えた。

「……何も教える気はないんすね。」
「ああ、全くないな。」
「…分かりました、今日のところは一旦引きましょう。」
「さっさと店にでも戻れよ、下駄帽子。」

 喜助は肩を竦め、そして、自分の店へと戻った。

「……一護、貴様はあの男を知っているのか?」
「……まあな。」

 遠慮がちに聞くルキアに一護は頷いた。

「さーて、教室に戻るとするか。」

 一護はこれ以上ルキアに質問されないように、話を変えた。

「おい、コンさっさとオレに体を変えせ。」
「何だよ、コンって言うのはっ!」
「改造魂魄だから「コン」だよ。」
「せめて「カイ」とかにしろよ。」
「はっ、てめぇはコンで十分だ。」

 一護は義魂丸を抜いて、自分の体に戻った。

「こいつが変な事をやらかさないでよかったぜ。」
「うむ。」
「ルキア、授業が始まるな、戻るぞ。」

 何事もなかったかのように、一護はオレンジの髪を靡かせて教室に戻っていった。

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