抗いし定め
3
井上の事件からしばらくして、それは起こった。
ただ、一護はこの事件に入るのは実際の日にちよりも早く感じていた。
それは彼女の思いすごしなのか、そうでないのかなんて、だいぶと前の話なのであまり覚えていない。
だけど、この後起こるであろう事は、細部は覚えてなくとも、大まかには分かっている。
チャドのつれているインコを見ながら、一護は気配を探った。
「……近くにいるな…。」
これ以上、友やルキア、そして、夏梨を傷つけない為にも、一護は細心の注意を払った。
チャドが何処かに行こうと分かった瞬間、彼女は今が動くときだと感じた。
ルキアに己の体を預け、一護は外に飛び出した。
「オジチャン…。」
「大丈夫だ…おれがついている。」
一護は彼らの背後に潜むそれを見つけ、チャドたちの間に割り込んだ。
「――っ!」
突然現れた存在に、そいつは驚いた。
「おいおい、てめぇはどんだけ罪を犯せばいいと思っているんだ?」
一護は常よりも冷え切った目で睨んだ。
「い、一護?」
何かの異変を察知したのか、丁度振り返ったチャドが死神となった一護の姿を捉える。
『し、死神かっ!』
驚いている虚に一護は笑う。
「お前はオレの仲間を傷つけた、許さねぇよ。」
『く、来るなっ!』
虚は蛭を一護に吐き出すが、一護はそれを掴み、瞬歩で移動して、それを掴んだ手を虚の口の中に入れる。
「お前の舌が蛭を爆発させるんだったよな?」
『ぐっ…何故、それを…。』
「鳴らさないのか?」
冷酷な目が虚を見下す。
「それじゃ、貰うな。」
一護は舌を掴み、斬月で切り落とした。
『ぐあっ!』
「さっさと地獄に落ちろっ!」
一護はそう言うと虚を切り、次の瞬間、彼女の目の前に地獄の門が開かれる。
「……。」
一護はそれを見て初めてそれを見た記憶を思い出し、苦い顔をする。
「もう…誰も傷つけたくないんだよ……。」
必要以上に皆が傷つかないように一護は護りたいと思う、だけど、この後藍染を倒すのならばある程度の犠牲は必要となる。
「……。」
一護は虚が地獄に堕ちるのを見送った。
「一護…。」
「ああ、チャド怪我はないか?」
声を掛けられ、一護は我に返り、チャドとインコのシバタを見た。
「大丈夫だ。」
「…はぁ。どこがだよ。」
チャドは大怪我はしていないが、それでも浅い傷がかなりあった。
「ゴメンナサイ…オジチャン……。」
謝るインコにチャドは優しい顔で見つめる。
「平気だ。」
「安心しろ、こいつの怪我はオレが治す。」
一護はそう言うと手のひらをチャドの傷口に向けた。
「……一護、何をした。」
「んー、鬼道?」
どうせ彼の記憶を後で消すので別段隠す事はないと思い、一護はばらす。
「きどう?」
「ああ、まあ、一種の能力だ。」
「……そうか。」
まだ分かってなさそうだが、一護は伝令神機を取り出した。
「ルキア?悪いがこっちにオレの体を持ってきてくれ。」
一護はルキアが来るまでチャドの手当てをインコの手当てをした。
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