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抗いし定め

 井上の事件からしばらくして、それは起こった。
 ただ、一護はこの事件に入るのは実際の日にちよりも早く感じていた。
 それは彼女の思いすごしなのか、そうでないのかなんて、だいぶと前の話なのであまり覚えていない。
 だけど、この後起こるであろう事は、細部は覚えてなくとも、大まかには分かっている。
 チャドのつれているインコを見ながら、一護は気配を探った。

「……近くにいるな…。」

 これ以上、友やルキア、そして、夏梨を傷つけない為にも、一護は細心の注意を払った。
 チャドが何処かに行こうと分かった瞬間、彼女は今が動くときだと感じた。
 ルキアに己の体を預け、一護は外に飛び出した。

「オジチャン…。」
「大丈夫だ…おれがついている。」

 一護は彼らの背後に潜むそれを見つけ、チャドたちの間に割り込んだ。

「――っ!」

 突然現れた存在に、そいつは驚いた。

「おいおい、てめぇはどんだけ罪を犯せばいいと思っているんだ?」

 一護は常よりも冷え切った目で睨んだ。

「い、一護?」

 何かの異変を察知したのか、丁度振り返ったチャドが死神となった一護の姿を捉える。

『し、死神かっ!』

 驚いている虚に一護は笑う。

「お前はオレの仲間を傷つけた、許さねぇよ。」
『く、来るなっ!』

 虚は蛭を一護に吐き出すが、一護はそれを掴み、瞬歩で移動して、それを掴んだ手を虚の口の中に入れる。

「お前の舌が蛭を爆発させるんだったよな?」
『ぐっ…何故、それを…。』
「鳴らさないのか?」

 冷酷な目が虚を見下す。

「それじゃ、貰うな。」

 一護は舌を掴み、斬月で切り落とした。

『ぐあっ!』
「さっさと地獄に落ちろっ!」

 一護はそう言うと虚を切り、次の瞬間、彼女の目の前に地獄の門が開かれる。

「……。」

 一護はそれを見て初めてそれを見た記憶を思い出し、苦い顔をする。

「もう…誰も傷つけたくないんだよ……。」

 必要以上に皆が傷つかないように一護は護りたいと思う、だけど、この後藍染を倒すのならばある程度の犠牲は必要となる。

「……。」

 一護は虚が地獄に堕ちるのを見送った。

「一護…。」
「ああ、チャド怪我はないか?」

 声を掛けられ、一護は我に返り、チャドとインコのシバタを見た。

「大丈夫だ。」
「…はぁ。どこがだよ。」

 チャドは大怪我はしていないが、それでも浅い傷がかなりあった。

「ゴメンナサイ…オジチャン……。」

 謝るインコにチャドは優しい顔で見つめる。

「平気だ。」
「安心しろ、こいつの怪我はオレが治す。」

 一護はそう言うと手のひらをチャドの傷口に向けた。

「……一護、何をした。」
「んー、鬼道?」

 どうせ彼の記憶を後で消すので別段隠す事はないと思い、一護はばらす。

「きどう?」
「ああ、まあ、一種の能力だ。」
「……そうか。」

 まだ分かってなさそうだが、一護は伝令神機を取り出した。

「ルキア?悪いがこっちにオレの体を持ってきてくれ。」

 一護はルキアが来るまでチャドの手当てをインコの手当てをした。

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