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二つの魂

 一護は虚を斬り終わり、背に己の斬魄刀、斬月を仕舞う。

「雲行きが怪しいな。」

 空には鼠色の雲が広がっており、今にも雨が降りそうで、一護は地面を蹴って瞬間、殺気を感じた。

「――っ!」
「……流石だね。」

 一護の避けた場所が、黒く焦げていた。彼女はそれが鬼道の技だと気付き、その相手を睨みつけようと顔を向けた。

「なっ!」

 向けた先に眼鏡を掛けた優男がいた。

「何で……あんたが……。」
「君には悪いが、消えてもらうよ。」
「くそっ!」

 一護は己の腕では彼には傷一つ付けられないかもしれないと思い、逃げ出すために瞬歩を使った。
 しかし、相手が悪かった。

「逃げられると思うのかい?」
「ちっ…。」

 一護は小さく舌打ちをし、それに忍ばせておいた伝令神機の会話ボタンを押した。

「何で、あんたがこんな場所にいるんだ。」
「君を始末するためだよ。」

 一護は出来るだけ会話を繋げようとした、この会話がどうか自分以外の死神にも伝わるように、一護は己の命を懸けていた。

「……五番隊長さんが、何でこんな十席を殺そうとするんだ。」
「君はもう既に、卍解を会得しているからね。」
「……。」

 そう、一護はもう既に卍解を会得していた。しかし、それを知っているのは自分と冬獅郎の二人だけのはずだ。

「それじゃ、遠慮なく行くぜ。」
「やれるかな?」
「やってやるさ、卍解…っ!天鎖斬月っ!」

 漆黒の衣に身を包み、一護は出刃包丁ではなく少し細身になった天鎖斬月を振った。

「それが君の卍解か。」
「ああ。」

 一護は先手必勝といわんばかりに瞬歩を駆使して、男に切りかかった。

「甘いね。」
「――っ!」

 一護の攻撃は男の手によって止められ、一護は顔を歪める。

「月牙天衝っ!」
「なっ!」

 流石の男も至近距離の漆黒の月牙天衝には驚いたのか、瞬歩で逃げようとした。
 一護はもう一度月牙天衝を放とうと剣を振り上げた瞬間――。

「射殺せ、神槍。」
「なっ!」

 一護の肩に伸びた刀が突き刺さった。

「お前は…市丸…ギン……。」
「藍染隊長も苦戦しているようですね。」
「ギン、楽しんでいたのに何を勝手に、手を出しているんだい?」
「おやおや、すみませんね。」
「まぁ、いい、もう飽きた所だしね。」

 そう言って、一護の視界から藍染の姿が消えた。

「どこ――っ!」

 緊張は解いていないというのに、背中に焼けるような痛みを覚え、一護の意識は途切れそうになる。

「……う…そ…だろ。」
「ほんま、手加減なしやね。」

 一護は地面に倒れこみ、傷口から血が流れる。

「さて、帰るとするか……。」
「ま…て……。」

 一護は最後の力を振り絞って、藍染の足を掴んだ。

「おや、まだ生きていたのか、手加減は難しいね。」
「まあまあ、藍染隊長、冥土の土産に教えてもいいんじゃありません?」
「そうだね。」

 クスクスと笑う藍染に一護は睨み上げる。

「それにしても、死に損ないにこんな力があるなんてね。」
「だれが…しに…そないだ……。」

 一護の姿を見て、藍染はニッコリと微笑み彼女に囁く。

「君は世界を統べたいと思わないかい?」
「なっ……。」

 カッと目を見開く一護を見て、藍染は満足そうに微笑んだ。

「なんで…たいちょう……のくせに……そんな…ことを……。」
「この世界が腐っているからだ。」
「……くさって…なんか……。」
「さあ、もうお喋りは終わりだ、その出血じゃ、もう助からないね。じゃあ、さようなら誇り高い黒崎一護。」

 藍染と市丸は穿界門を開き、そのまま姿を消した。

「………とう…し…ろう……ごめん……。」

 一護は最後に愛する者に謝り瞼を閉ざした。

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